デジタル社会の市民に求められるリテラシーの習得や向上について協議している総務省の「ICT活用のためのリテラシー向上に関する検討会」の下に設けられた、「青少年のICT活用のためのリテラシー向上に関するワーキンググループ(WG)」は12月14日、初会合をオンラインで開き、青少年のICTリテラシー向上施策を、自分たちの意思で自律的にデジタル社会と関わっていくデジタル・シティズンシップの考え方に基づいたものに転換させていくための議論をスタートさせた。2023年6月をめどに、新しいICTリテラシー向上施策の普及に向けたロードマップを取りまとめる。
青少年のICT環境を巡っては、スマートフォンの利用が進展する中でSNSなどでの被害が高止まりしており、拡散された誹謗(ひぼう)中傷や偽・誤情報に触れる機会も増えている。
総務省ではこれまでも、学校現場などで無料の出前講座を行ったり、インターネットのトラブル事例集を作成したりするなどして、青少年のICTリテラシーの向上に向けた取り組みを重ねてきたが、知識伝達を主目的にした講義形式が中心で、ICTの利用に伴うリスク回避のための啓発という側面が強かった。
そこで、今回設置されたWGでは、デジタル・シティズンシップの考え方に基づき、オンラインサービスの特性や利用の際の責任を踏まえながら、主体的・双方向的な方法によってサービスの受容や活用、情報発信の仕方を学べるようにする施策について検討する。中村伊知哉iU(情報経営イノベーション専門職大学)学長が座長となり、検討会と連携しながら23年6月をめどにロードマップを取りまとめる。
この日の会合では、WG構成員から青少年のICTリテラシーの向上に関する取り組みが報告された。
学校現場の実践について発表した千葉県柏市立手賀東小学校の佐和伸明校長は、GIGAスクール構想による1人1台環境が実現したことで、ICTを活用した学びは大きく変化していると強調。「今の学校現場で望まれているのは、全ての子どもたちが安心して体験できること。特に失敗できる場を、学校や家庭で提供することが重要だ」と話した。
また、経済的に困窮している子育て世帯にオンライン教育の環境やコンテンツを提供するプログラムを展開している、富永みずきカタリバ家庭・保護者オンライン伴走領域統括は、子どものICT活用について、保護者はどうしても長時間利用や依存への懸念が強く、相談相手やICT利用について子どもと対話する時間が不足していると指摘。青少年のデジタル利用に特化した家庭支援カウンセラーの認定資格制度の創設や、そうした専門家で構成される団体の認定を進め、学校や図書館、児童福祉機関などに配置することを提案した。