いじめ対応の改善・強化に向けて審議を行っている、文科省の「いじめ防止対策協議会」の今年度3回目の会合が12月19日、オンラインで開催された。前回に引き続き、学校や学校設置者に対して通知徹底を図る事項について協議。委員からは発達障害を含め、特別な支援を必要とする児童生徒が増加していることを踏まえ、虐待や家庭内不和だけでなく、多様な背景を考慮する必要があるとの指摘が出た。
前回の会合を踏まえ、文科省は通知事項案の表現を修正。▽犯罪に相当する事案を含むいじめ対応における警察との連携の徹底など、関係機関との連携強化▽被害児童生徒・加害児童生徒の双方に対する指導・支援の充実▽保護者と学校が共にいじめ防止対策を共有するための普及啓発の推進▽いじめの重大事態における総合教育会議の活用および首長部局からの支援――の4点をとした。さらに、それぞれに主なポイントと具体的な対応案を記した。
警察との連携強化については、主なポイントとして、重大ないじめ事案等が発生した際は、法律に基づき、直ちに警察に相談や通報を行い、適切に援助を求めるなど連携して対応を行うことを挙げた。加えて、相談などを行うか迷う事案も考慮し、警察と日常的に相談・連携できる体制の構築が必要とした。
さらに近年、インターネット上のいじめが増加しているとして、特に匿名性が高く、拡散しやすい性質を持つ児童ポルノ関連のいじめ事案に関しては、一刻を争う事態も生じることから、学校は早急に警察に相談などを行い、連携して対応することを求めた。
また、連携強化を図るために、いじめの情報共有、相談に関する協定などの締結・見直しを進めるほか、学校・警察双方で、連絡窓口となる担当職員の指定を徹底することを盛り込んだ。またその際は、休日など勤務時間帯以外の連絡体制にも留意することとした。
被害・加害児童生徒の双方に対する指導・支援については、被害児童生徒に寄り添い、支援できる体制の構築などのほかに、いじめられた側、いじめた側が入れ替わる場合もあるとし、幅広く正確な事実関係の確認と組織的な対応を徹底することをポイントに挙げた。
続けて、被害児童生徒については、不登校や自死といった二次的な問題を防ぐための心のケアや、学習面での支援に加え、必要に応じて、加害児童生徒を別室において指導したり、出席停止制度を活用したりすることで、被害児童生徒が落ち着いて教育を受けられる環境の確保を図ることとした。
保護者会などの活用を主なポイントとした保護者への普及啓発については、「学校いじめ防止対策基本方針」の内容を入学や各年度の開始時に児童生徒、保護者に説明することに加え、方針を見直す際は保護者や地域の参加が望ましいとした。また、いじめが犯罪行為に相当しうる場合は、警察に相談する可能性があることを、あらかじめ保護者に説明しておくことが必要とした。
総合教育会議の活用については、協議事項として、「児童、生徒等の生命又は身体に現に被害が生じ、又はまさに被害が生ずるおそれがあると見込まれる場合等の緊急の場合に講ずべき措置」が規定されているものの、十分に活用されているとは言い難いとして、いじめの重大事態が発生した場合は、速やかに会議を開催し、地方公共団体の長と教育委員会が緊密に連携して対応することを求めた。
八並光俊委員(東京理科大学大学院理学研究科科学教育専攻教授、日本生徒指導学会会長)は虐待や貧困、家庭内不和などがある場合、スクールカウンセラーを活用し、指導だけでなく、支援を行うこととした加害生徒への指導・支援について言及。通常の学級に在籍する児童生徒の8.8%が特別な教育支援を必要とするとの文科省の調査を踏まえ、発達障害に対する支援の記述も必要とした。
この意見に対し、新井肇座長(関西外国語大学外国語学部教授)は賛同した上で、「心理的なストレスを抱えている子や、受験競争の圧力を感じている子、先生との関係もあるかもしれない。その辺を幅広く捉えて、限定的に捉えられるようにはしないということが大事」と応じた。
手島俊樹委員(山梨県教育委員会教育長、全国都道府県教育長協議会)は「行事に一緒に参加させないでほしいなど、被害児童生徒の保護者がさまざまな要求を学校にしてくるケースは多く、その対応も学校現場は苦労している」と指摘。保護者の要求に対し、毅然(きぜん)とした態度で応じるなどといった対策を記すことも必要とした。