こども大綱策定に向けて貧困対策の意見案まとまる 有識者会議

こども大綱策定に向けて貧困対策の意見案まとまる 有識者会議
小倉担当相(奥中央)が出席し、オンラインを交えて開かれた有識者会議
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 内閣府は12月19日、「子供の貧困対策に関する有識者会議」の締めくくりとなる第19回会合をオンラインを交えて開き、「子供の貧困対策に関する大綱」の進捗(しんちょく)状況およびこども大綱策定に向けての意見案が、構成員によって了承された。

 先の通常国会で成立したこども基本法では、国は子供施策に関する基本的な方針や重要事項を「こども大綱」で定めることとしており、そこにはこれまで別々に策定されていた「子供の貧困対策に関する大綱」「少子化社会対策大綱」「子供・若者育成支援推進大綱」の内容を盛り込むとされている。同会議では、2019年に策定された「子供の貧困対策に関する大綱」のフォローアップを行うとともに、その進捗状況や23年秋をめどとするこども大綱策定に向けて参加構成員らの意見を幅広くまとめ、この日案として提示した。

 それによると、「子供の貧困対策に関する大綱」策定後の取り組みについては、高等教育の修学支援新制度の開始、幼児教育・保育の無償化などが着実に推進されているほか、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を行うための子育て世代包括支援センターや子ども家庭総合支援拠点などの整備が進められ、貧困対策の充実化が図られてきたとした。

 その一方で、今なお支援を必要とする子供やその家族が多く存在し、その状況は厳しく、スクールソーシャルワーカーの配置拡充による教育と福祉の連携促進や子供施策と若者施策の融合、貧困の状態にある子供や家庭に支援を届ける上での、民間団体を含む幅広い主体間の連携体制について改善を求める声が多く、さらなる施策の充実が必要とした。

 今後、こども家庭庁で子供の貧困対策に関する施策を一元的に進める中で、安定税源の確保を図りつつ、子供や家庭が抱えるさまざまな課題に対して、制度や組織による縦割りの壁、年齢の壁を克服した切れ目ない包括的な支援を講じていく必要もあるとしている。

 「子供の貧困対策に関する大綱」を踏まえた「こども大綱」制定に向けて、テーマごとに各構成員の意見も多く盛り込まれた。このうち、「教育の支援」については、「学校指導・運営体制の構築について、チームの組み方や体制作りが各学校に任されているが、子供の最善の利益を優先したチーム学校を実現するために、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーなどの専門職を含む検討会議の実施を学校教育法施行規則に位置付けるなど法定化する必要がある」「フリースクールなどにおいては、子供の学力、生活環境などさまざまな観点から、子供自身が選ぶことのできる学習支援の選択肢が増えるようにすべき」などが入れられた。

 教育費負担の軽減に関連しては「低所得世帯においては、高校就学時に必要となる多額の支出が大きな負担となり進学に影響があるため、高校生等奨学給付金について、年収要件を緩和するとともに学用品購入で支出が増える3月中に給付するよう時期を早める改善が必要」との指摘があった。23年4月から予定される部活動の地域移行に関連して「子供の持続可能で豊かなスポーツ活動や文化活動を支えるためには、経済的に困窮する家庭への補助制度の創設が不可欠。就学援助制度での部活動補助の金額や対象となる所得水準について、自治体間格差の縮小が必要」という視点もあった。

 また、「経済的支援」については、「現金給付についてひとり親世帯かどうかといった世帯構成よりも、ふたり親であっても所得状況が重視される仕組みを用意することが重要で、児童手当に関しては、低所得世帯に対し増額し、また高校生世代まで延長することで貧困に陥ることを防止できる」「コロナ禍で母子家庭、とりわけ母子生活支援施設で暮らしている親子への影響は非常に大きく、そうした家庭に対する支援を拡充すべき」などとされた。

 このほか、「施策の推進体制」については、「切れ目のない支援を行うため、子供の貧困対策に係る支援の全体像を見える化・共有し、省庁間連携がスムーズに行われるべきで、特に貧困の連鎖を断ち切るために教育は重要であることから、子供の貧困の解消に向けた実効性ある取り組みを進めるためには、こども家庭庁と文科省との密接な連携が必要」「地域間格差を埋めるために、国においては各自治体を支援するとともに、自治体を超えた広域連携の構築・運営・支援も積極的に検討すべき。その際には、デジタルを活用し、隣接自治体だけではないより広域の連携も想定した連携の在り方を検討すべき」などとする指摘もあった。

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