静岡県牧之原市の認定こども園で今年9月、送迎バスに園児が置き去りにされ死亡した事件を受け、国交省は12月20日、国の緊急対策で2023年4月から園などの教育施設の送迎バスに設置が義務付けられた、安全装置の仕様についてのガイドラインを策定した。「降車時確認式」「自動検知式」の2方式の装置について必要な性能要件を定め、今後、同省ではこの要件を満たす安全装置のリストの公表に向けた準備を進める。
送迎バスの安全装置については、同事故を受けて設置された関係府省会議が10月にまとめた緊急対策の一つとして保育所、幼稚園、認定こども園、特別支援学校などの送迎バスに対して設置の義務化を決定。さらに、国交省が10月から学識経験者を委員とするワーキンググループでどのような安全装置がふさわしいか、送迎バスの運用実態や装置の開発状況などを踏まえて検討してきた。この事件の後も全国でヒヤリハット事案が続く中、保育関係者によるヒューマンエラーを補完する装置として、今回、「降車時確認式」「自動検知式」の2種類の装置について、最低限満たすべき要件を取りまとめた。
このうち、降車時確認式の装置は、エンジン停止後に車内向けの警報を発した後、運転者らが、置き去りにされた子供がいないか確認しながら車内を移動し、車両後部の押しボタン装置を操作することで、警報を解除可能とするもの。車内の確認と装置の操作が行われないまま一定時間が経過すると、さらに車外向けの警報を発することとしている。
自動検知式の装置については、エンジン停止から一定時間後にカメラなどのセンサーにより車内の検知を開始し、置き去りにされた子供を検知した場合に車外向けの警報を発することとしている。
両方式に共通する要件としては、運転者らが車内の確認を怠った場合には、速やかに車内への警報を行い、15分以内に車外への警報を発するほか、子供がいたずらできない位置に警報を停止する装置を設置することとした。また、装置が故障・電源喪失した場合にも、運転者らに対してアラームなどで故障を通知することを求めた。
国は安全装置の義務化の対象を保育所、幼稚園、認定こども園、特別支援学校などの送迎バス約4万4000台としており、標準的な装置1台につき18万円を上限に支援する。このほか小学校と放課後児童クラブの計1万1000台についても、この上限額の半額をめどに支援。これらを含め、22年度第2次補正予算に子供の安全対策として計234億円が盛り込まれた。国は安全装置設置の経過期間を23年4月から1年間としているが、暑さが厳しくなる6月までに設置するのが望ましいとしている。
小倉将信こども政策担当相は20日、同ガイドラインの公表前の閣議後会見で「国交省と連携をして各メーカーに対してガイドラインに適合する装置の製造販売を促すと同時に、内閣府においてそうした装置のリストを作成、周知することによって、各園における安全装置の装備が円滑に進むように取り組んでいきたい」と述べた。