コロナ禍以降、子どもの体力低下に歯止めがかからない――。スポーツ庁は12月23日、2022年度の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果を公表。体力合計点は小・中学校の男女ともに、現行の調査方法になって以来、最低となった。この結果について、担当者は「コロナ=体力低下というのは短絡的」としながらも、肥満の児童生徒の割合が中学女子を除き、最も高かったことも考慮し、「運動だけでなく、広く子どもの生活習慣を変えてしまった可能性がある」と分析した。
体力合計点は小学校が男子52.3点(前回52.5点)、女子54.3点(同54.7点)。中学校が男子40.9点(同41.1点)、女子47.3点(同48.4点)だった=図表①。前年度と比較し、「50m 走」「20m シャトルラン」、中学校の「持久走」「上体起こし」「反復横とび」は低下した一方、中学校男子の「立ち幅とび」は調査開始以来の最高値だった。
また、肥満の児童生徒の割合についても、小学校が男子14.5%(前回13.1%)、女子10.0%(同8.8%)、中学校が男子11.4%(同10.0%)、女子7.5%(同7.1%)と全てで前回を上回った=図表②。テレビ、スマートフォン、ゲーム機などによる映像の視聴時間「スクリーンタイム」がコロナ禍以降、増加傾向にあることから、スポーツ庁政策課は「コロナ禍で家にこもっていたり、体を動かさなかったりという状態が影響しているだろう」と分析した。
一方で、「運動が好き」や「体育が楽しい」と答えた児童生徒は前年度より増加。「体育が楽しい」については、小学校ではコロナ禍以前の水準に戻り、中学校では男子56.8%、女子41.9%と、ともに過去最高だった。分析にあたった中京大学スポーツ科学部の中野貴博教授は「子どもたちの運動に対する欲求はあると思う。子どもの体力は十分に回復可能だと考える」とした。
スポーツ庁は今後の取り組みとして、児童生徒の運動意欲を高めるため、アスリートを体育の授業に派遣する事業や子どものニーズに応じたスポーツ環境の整備などを進めるとしている。
また、来年度から公立中学校で休日部活動の地域移行が始まることに伴い、各自治体の教育委員会で行っている取り組みを初めて調査。全ての都道府県と政令市が関係者会議や予算措置、モデル校を指定した実証研究など、何らかの取り組みをしている一方、市区町村では37.7%が「実施していない」と回答した=図表③。スポーツ庁政策課は「検討会議の提言が6月に出たことを踏まえ、現状も同じかは分からない」と前置きした上で、「受け皿がなく動きにくい市区町村もあると思っている。地域格差がなるべく出ないように努力したい」とした。
調査は4~7月、全国の小学校5年生と中学校2年生を対象に悉皆(しっかい)調査で行われた。