探究や横断的学習の意義を先進校からヒアリング 中教審WG

探究や横断的学習の意義を先進校からヒアリング 中教審WG
探究や横断的学習の意義についてヒアリングを行った中教審のワーキンググループ
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 高校教育の共通性と多様性への対応を検討する、中教審の「高等学校教育の在り方ワーキンググループ」の第4回会合が1月12日、オンラインで開かれた。探究学習や文理横断の学びについて、先進的な取り組みを行う2校などからヒアリング。資質・能力の向上や登校のきっかけづくりなどの成果と、教員負担、地域全体への普及といった課題を確認した。

 この日は、兵庫県教委と兵庫県立加古川東高校、宮崎県立宮崎東高校が探究学習や文理横断型の授業における成果や課題を説明した。

 兵庫県では「兵庫型STEAM教育」と銘打ち、従来のSTEAM教育に加え、英語を駆使する課題解決型のカリキュラム確立を目指している。県で3校のモデル校を指定し、3Dプリンターやドローン、レーザー加工機などが設置されたSTEAMルームの整備や企業との連携、ネーティブ英語教員の配置といった支援を行っている。

 モデル校のうちの一つ、加古川東高校では各教科の専門性を生かした協働体制を構築するため、英語、理科、国語、数学、社会、実習助手の教員計11人からなる教育企画部を創設。同部が中心となって、カリキュラム内容の検討や生徒のサポートを行っている。

 主な取り組みとして、希望者を対象に夏休みを利用した特別講座を実施。外部講師も招き、動画作成やロボット制作、日本語学校での海外留学生との交流など今年度は26科目を開講した。延べ367人が参加し、320人いる2年生の半分が何らかの講座を受講したという。特別講座では教員による指導を基本的な知識を学ぶための最初の3時間程度にとどめ、残りの時間は教員がファシリテーターに徹し、生徒に自由な発想で取り組んでもらった。

 参加した生徒が「実際に作る大切さを感じ、機械に対する意識が変わった」「根拠を持って意見を言えたり、アイデアを出せたりするようになった」と話すなど、ほぼ全ての生徒が参加してよかったと答え、多くの教員が意義を感じているとした。また、特別講座の受講生が計画性や分析力といった能力が有意に伸びたといい、「比較的意欲が高い生徒が参加していることもあるが、そのような生徒にもともと備わっていた特性も伸ばすことができる内容だった」と分析した。

 一方で課題として、外部講師との打ち合わせ増加に加え、900人以上の生徒が在籍する高校の通常授業に導入することによる教員の負担増加や、一部講座をオープンにしたものの、外部参加者が少なく、地域や他校への普及につながっていないことを挙げた。

 これらの取り組みに対して、田村知子委員(大阪教育大学連合教職実践研究科教授)が「探究授業と受験は二項対立と考える風潮はまだある」として、学力の伸長について質問。志摩直樹校長は「学力がどう上がるかというのは、分かっていない部分が多い」と述べる一方、「大きなモチベーションにつながっているだけでなく、大学に入ってから非常に役に立ったというのは卒業生からよく聞く」と答えた。続けて、兵庫県教委の新谷浩一高校教育課長が「受験教育ではなくて、人間としてさまざまな力をつけることが将来につながっていくと考えている。18歳で完成ということではなく、将来に生かせるということをずっと考えている」と探究学習の持つ価値を強調した。

 夜間定時制で探究学習に携わる宮崎東高校の西山正三教諭は、生徒の特徴として「不登校・昼夜逆転・自己肯定感が低い」を挙げ、探究学習の位置付けを「生徒の得意なもの、好きなものを見つけ、進路につなげる時間」と説明した。

 1年では自分のことを知る、好きになるための「自己探究」、2・3年では実際に探究活動を行い、情報収集しながら、整理分析やプレゼン資料をまとめる「社会探究」、3・4年ではこれまでの作業やノウハウを活用して自主的に探究活動を行う「進路探究」を実施。研究要旨を50語程度の英語でまとめるほか、プレゼン資料作成(情報)や新聞記事のスクラップ(国語)などを通して横断的学習を展開するほか、成果を披露する場として、全学年全生徒の発表会を設けている。

 さらに学習指導要領の3観点に基づき、「複数教科の知識が横断的に取り入れられているか」「他の文献等からの引用だけでなく、自らの実験や取材等に基づいたものになっているか」といった評価基準のシラバスをあらかじめ作成し、教員や生徒に提示することで意識付けを行っているとした。

 成果として、西山教諭は「人前で話すことができるようになっただけでなく、自分たちでアンケートを取ったり、部活動を立ち上げたいと話したりするなど積極的になった」と強調。「読み書きや計算が苦手な生徒もいるが、基礎知識が乏しくても、探究を行うことで、思考力を高校からでも養うことができると手応えを感じた」と語った。

 この日は同校の生徒も会合に出席。「探究は自分を表現できる時間。嫌なことがあっても、毎週1コマあるから学校に行ける」「おのおのが自由なテーマで探究しており、友達の内容を知ることで刺激になる」など、やりがいを口にした。

 また、西山教諭は同校のカリキュラムでは高校2年に国語の授業がないにも関わらず、2年から3年にかけて国語の成績が上がったとし、「英語や数学なども横断的に行うことで、総合的な学力の底上げにもなるのではと期待している」と述べた。

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