不登校支援充実と同時に、教員の労働環境改善を 当事者らが意見交換

不登校支援充実と同時に、教員の労働環境改善を 当事者らが意見交換
さまざまな立場の関係者が集ったパネルディスカッション=オンラインで取材
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 「子どもたちは『まず先生が幸せになってほしい』と語ってくれた」――。不登校当事者や保護者、現役教員、行政関係者らが一堂に会するパネルディスカッションが1月11日、NPO法人多様な学びのプロジェクト主催で開催された。不登校の児童生徒をサポートする環境を充実させると同時に、教員の労働環境を改善させる必要性について多方面から意見が交わされた。

 不登校当事者として登壇した色葉みとさんは、小学4年生から中学3年生まで学校に行かずに過ごし、現在は通信制高校に通う。「その人によって安心安全な場は、かなり変わると思う。一人一人に合った安心安全の場をつくれる公教育になってほしい」と大人たちに語り掛けた。

 同じく不登校経験者で、現在は不登校の子どもの保護者でもある鈴村結さんは、「学校をどのように変えてほしいか」との問いに「システムというよりも、姿勢なのではないか」と回答。「例えばフリースクールに足を運んでもらったり、学校に行けない子どもを支援する方と接してもらったりなど、学校関係者の方々にもう少しだけ不登校や多様な学びについて触れる機会を増やしてもらうと、不登校に対する姿勢が変わるのではないか」と提案した。

 これに対して大阪府の公立小で教壇に立つ松下隼司教諭は「教員が不登校に関する研修や、フリースクールに行く機会を設けてほしい。ただ、そのためにいくつも削らなければならない業務があると思う。そうでなければ、とてもではないが現場は回っていかない」と現場の苦しい胸の内を明かした。

 滋賀県草津市教育委員会の北村大輝児童生徒支援課主査は教育委員会の立場から、「教員が多忙だと、コミュニケーションがうまくいかなかったり、言葉のすれ違いがあったりなどがきっかけで、子どもたちがしんどい思いをすることにつながることもあるのではないか。研修などを充実させるのと同時に業務を精選したり、人的な補助を入れたり、教員をサポートする仕組みが必要だと思う」と述べた。

 同法人の生駒知里代表理事は不登校当事者の子どもにヒアリングをする中で、教員の働き方を改善してほしいという意見が多数出たことに触れた。「中には、先生の八つ当たりと感じてしまう言動もあったと振り返る子もいた。ただ子どもたちは、『先生が長時間働かないようにしてあげてほしい』『まず先生が幸せになってほしい』と語ってくれた」と振り返った。

 これを踏まえて、文部科学省児童生徒課生徒指導室の大野照子課長補佐は「子どもたちの『先生に幸せになってほしい』という言葉を聞いて胸を打たれた。国としても新しいことをやると同時に、人員の配置や支援員の充実など、教員の業務をサポートする必要があると改めて感じる」と強調した。

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