出口の質の保証など素案まとめる 大学教育改革に向けた振興方策

出口の質の保証など素案まとめる 大学教育改革に向けた振興方策
オンラインで行われた中教審大学振興部会(YouTubeで取材)
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 大学での出口の質の保証などについて検討していた中教審大学分科会大学振興部会は1月13日、オンラインで会合を開き、グローバル化に対応する今後の大学教育改革に向けた振興方策についての素案をまとめた。振興部会での議論はこの日で終わり、素案は大学分科会で議論される。

 中教審の答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」(2018年)では40年を見据えた大学教育が目指す姿として、学修者が学修の成果を実感できる「学修者本位の教育の実現」がうたわれた。少子化を背景とした社会人や留学生の受け入れ拡大、地域と産業界などの連携、地域の大学の強みや特色を生かした連携・統合などの促進といった改革方針に従って、大学を巡る制度改正などの取り組みが進められているが、大学によっては改革にばらつきがみられ、取り組みが形式的・表層的であるとの指摘もでてきた。同部会では22年度については、答申以降の検討課題として「出口における質保証の充実・強化」「文理横断・文理融合教育の推進」「学生保護の仕組みの整備」について審議を進めてきた。

 この日公表された素案によると、このうち「出口における質の保証」については、現状の課題としてグローバル化が進み、学位の国際通用性の確保や相互承認の流れのもと、その要請が高まっており、充実・強化が必要であると指摘。文科省の21年度全国学生調査(試行実施)によれば、学生の授業への出席時間が長い一方で予習・復習にかける時間が短く、密度の濃い主体的な学修が行われていないほか、最終学年においても就職活動などで学修時間が極めて短い学生も一定数おり、質の保証の観点から課題があるとした。

 また同調査では、オンライン授業に関しても利点を感じている学生が多い一方、対面授業と比べて教員や学生とのやりとりがしにくいと感じている学生もおり、今後、対面授業とオンライン授業を組み合わせたハイブリッド型教育の確立に向けたガイドラインの策定が求められるとした。

 その上で質の保証の充実・強化に向けた今後の方向性としては、学修成果・教育成果の把握・可視化と、その前提となる成績評価の信頼性の確保、情報公表など各大学における教学マネジメントの改善の取り組みが重要であるとした。大学での成績を数値化したGPAの活用は成績評価の信頼性の確保につながるが、学部段階では98%の大学が導入しているにも関わらず、実際には進級判定や卒業認定の基準としている大学は1割台にとどまる。各大学において形式的・表層的な対応ではなく、質保証の強化につながるよう実質化することが求められるとした。

 教員の採用においても、大学全体のミッションに加えて組織や分野の特性を考慮しつつ、研究業績のみならず授業改善の取り組みや教学マネジメントの改善への貢献、研究指導を含むゼミ・研究室の運営なども含めた教育業績について評価軸に盛り込み、質保証の実質化へのインセンティブにすることも考えられるとした。

 さらに卒業論文・卒業研究やゼミ教育は質保証に重要な役割を果たすとして、有効に機能させるためには学修目標や評価基準についてディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与の方針)に定めた資質・能力を踏まえて規定し、周知していくことが必要とし、加えて学修目標を達成するために必要なスタディ・スキルを学生が低年次から系統的に学び、身に付けることができるよう教育課程を工夫することも重要と指摘した。

 産業界においても採用選考にあたって学修成果や学業への取り組み状況を適切に評価することや、学生に対して求める人材のイメージ、資質・能力や技能について具体的に示していくこと、学修成果を重視しているとのメッセージを積極的に発信することなどが求められるとしている。

 この日まとめられた素案は1月25日に中教審大学分科会で議論され、年度内にも審議まとめとされる予定となっている。

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