認定NPO法人カタリバ(今村久美代表理事)が、不登校生徒の支援に夜間中学を活用する実証事業をこのほど開始した。文科省の「夜間中学の設置促進・充実事業」に採択されたもので、不登校の子供たちの多様な学びの選択肢の一つとして利用が期待されている。
文科省の2021年度の調査では、全国の小中学校における不登校児童生徒は約24万5000人で前年度より25%ほども増加し、過去最多を更新した。このような実態を背景に、文科省では不登校の子供たちに対する支援策として、19年10月に全国の教委にあてた通知の中で、「不登校児童生徒の一人一人の状況に応じて、教育支援センター、不登校特例校、フリースクールなどの民間施設、ICTを活用した学習支援など,多様な教育機会を確保する必要がある」とし、さらに「夜間中学において、本人の希望を尊重した上での受け入れも可能」と、夜間中学を選択肢の一つとした。
カタリバでは15年に島根県雲南市の教育支援センターで不登校の子供たちへの支援事業をスタートさせ、その後、都内の放課後施設やオンラインを活用した支援に取り組み、さまざまな事情で学校に行けない子供に学びの場を提供してきた。その中で、夜間中学が一から学び直しが必要な子供たちにとっては、少人数で手厚い学習サポートを受けながら学べることができ、起立性調節障害の子供たちにとっては学びの時間が適していて、不登校支援に有効であると考えられることなどから、文科省の採択を受けて東京都足立区立第四中学校の夜間中学を活用した実証事業を開始することにした。
カタリバによると、この取り組みでは夜間中学に通う不登校の子供たちに伴走するとともに、子供たちを円滑に受け入れるための体制づくりを行い、子供たちが一人一人に合った学びの場を選択できるように、これまで不登校支援事業で培ったノウハウを生かして、新たな学びの場とすることを目指すという。
実証事業の対象生徒は中学1~3年生の生徒。取り組み内容としては、カタリバが運営する放課後施設の中で夜間中学が適していると考えられる生徒や、教委が紹介する生徒を夜間中学側に紹介するほか、夜間中学への登録など登校のための準備を支援。紹介した生徒について個別支援計画コーディネーターが学びの計画を立てて、該当生徒に伴走していく。
すでに2人の生徒がこの取り組みを通じて登校を始めており、「夜間中学に通う前はうまくやっていけるか不安だったが、少人数なので先生に丁寧に勉強を教えてもらえて、問題が解けることで勉強が楽しいと思えるようになった」「学校に行けない中でも、学校には行った方がよいと思っていた。夜間中学は今の自分にとっては普通の中学校より行きやすく、学校に通えるようになってよかった」という声を寄せているという。