第211通常国会が1月23日、召集された。防衛費増額、旧統一教会の問題とともに、岸田文雄首相が最重要施策とする「異次元の少子化対策」が議論の大きなテーマになるとみられており、激しい論戦が予想されている。今国会で文科省は私立学校法の改正案、日本語教育機関の認定等に関する法案など、4法案の提出を予定している。2023年度一般会計予算案としては総額5兆2941億円を計上。永岡桂子文科相はこの日の閣議後会見で「さまざまな議論を積み重ねて、文科行政を着実に進めていくために、法案、予算案の成立をしっかりとさせていただく」と話した。
会期は6月21日までの150日間。この日の首相の施政方針演説など受け、25~27日に各党代表質問が衆参両院で行われる。
岸田首相は演説で、持論の「新しい資本主義」を持続可能で包摂的な新たな経済社会を作っていくための挑戦と位置付け、それらを考える上での最重要政策が「子供・子育て政策」であると強調した。「急速に進展する少子化により、昨年の出生数は80万人を割り込むと見込まれ、わが国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれている。子供・子育て政策への対応は待ったなしの先送りの許されない課題」と危機感をあらわにした。
その上で、▽子供ファーストの経済社会を作り上げ、出生率を反転させるため、小倉将信こども政策担当相に指示した、児童手当を中心とした経済的支援の強化▽幼児教育・保育サービスの強化および全ての子育て家庭を対象としたサービスの拡充▽働き方改革の推進と制度の充実――の3つの基本的方向に沿って、子供・子育て政策の強化に向けた具体策の検討を進めていくことや、高等教育の負担軽減に向けた出世払い型の奨学金制度の導入にも取り組むことを表明。
これらの検討に当たって何よりも優先されるべきは当事者の声であるとして、首相自身が全国各地で子供・子育ての当事者である保護者や子育てサービスの現場の人々、若い世代の意見を徹底的に聞くところから始めるとし、「年齢・性別を問わず、皆が参加する従来とは次元の異なる少子化対策を実現したい」と、改めて「異次元の少子化対策」を進める決意を明らかにした。
そして、4月に発足するこども家庭庁の下で、今の社会で必要とされる子供・子育て政策を体系的に取りまとめつつ、「6月の骨太方針までに、将来的な子供・子育て予算倍増に向けた大枠を提示する」と改めて表明。同予算の倍増問題については昨年の通常国会以来、野党からも再三、財源について追及されており、今国会でも防衛費の財源と同様、激しい論戦になるとみられている。
岸田首相は子供・子育て政策について、「最も有効な未来への投資であり、これを着実に実行していくため、政策として充実する内容を具体化し、その内容に応じて各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など、さまざまな工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えていく。安心して子供を産み、育てられる社会をつくる。全ての世代、国民皆に関わるこの課題に共に取り組んでいこう」と呼び掛けた。
一方、日本の経済成長と分配の好循環の鍵となるのが賃上げと「投資と改革」であるとして、「GX(グリーントランスフォーメーション)」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「イノベーション」「スタートアップ」「資産所得倍増プラン」の具体的な取り組みを挙げた。このうち「イノベーション」に関連して、「教職員の処遇見直しを通じた質の向上、教育の国際化、グローバル人材の育成に向け、日本人学生の海外派遣の拡大や有望な留学生の受け入れを進める」と述べた。
また新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けを、現行の「2類」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げる方向で検討するよう指示した問題に関連して、医療体制、公費支援などの政策・措置の対応について段階的な移行の検討・調整を進めるとした上で、マスクの着用について「5類への見直しと合わせて考え方を整理していくが、今一度、『原則、外ではマスク不要』といった現在の取り扱いについて、周知徹底を図る」とした。