東京都日野市は1月21日、部活動の延長・代替ではない「新しいスポーツの選択肢」として、同市とゆかりのあるスポーツチーム・企業・大学・スポーツ団体と共にスタートさせる「ひのスポ」のキックオフイベントを、同市立南平体育館で開催した。この日は同市内の小学5、6年生と中学生の50人が参加。子どもたちは各競技のプロ選手から指導してもらったり、これまでやってみたかったけれども部活動にはなかった競技にチャレンジしたりして、「今日やったスポーツ以外にも、もっとスポーツを楽しんでいきたい」などと喜びの声を上げていた。「ひのスポ」の本格実施がスタートする来年度は、拠点校の2中学校を中心に、年間を通じて中学生が週末に活動できる場を確保していくとしている。
同市立中学校は8校あるが、中には野球部やサッカー部などの団体競技で人数が足りず、チームが組めない学校もある。また、やりたい部活動が学校にないといった声や、経験のある指導者がいないといった課題もあった。そこで、部活動の延長・代替ではない新しいスポーツの選択肢として、同市とゆかりのあるスポーツチーム・企業・大学・スポーツ団体と共に、子どもたちが誰でもスポーツに親しむことができる新しい環境づくりを目標として、「ひのスポ」を始動することとなった。
「ひのスポ」の主な特徴は、①学校単位ではなく、地域単位であること②地域企業や地域団体などと連携すること③市内のさまざまな施設を活用すること。本格実施となる来年度は、まず拠点校2校(中学校)を中心に、年間を通じて中学生が週末に活動ができる場を確保し、さまざまな企業や大学などと連携しながら、活動機会を充実させていくとしている。
キックオフイベントには、市内の小学5、6年生と中学生の50人が参加。同市にゆかりのある東京ヴェルディが「フットサル」を、日野キングフィッシャーズが「卓球」を、bjアカデミーが「3人制バスケ」を、コニカミノルタが「正しい走り方」を指導。参加者は、事前にやってみたい2種類のスポーツを選択し、当日体験した。
コニカミノルタの陸上部コーチや現役長距離選手が参加した「正しい走り方」には、多くの小中学生が参加。音楽のリズムにのり、サイドステップを繰り返しながら、身体の使い方を学んでいった。コーチからは「できなくてもいいからチャレンジしてみよう」と声が掛かり、最初は動きが小さかった子もどんどん大きな動きができるように。1時間の体験後はコーチから「教える前は自己流だったけれど、前に進もうとする動きができてきていた。何度も繰り返すことで正しいフォームが身に付いて、速く走れるようになる」とアドバイスが送られていた。
東京ヴェルディによる「フットサル」では、サッカーとは違うルールやサッカーボールよりも少し重みのあるフットサル専用のボールについて説明を受けた後、ドリブルの練習をしたり、ミニゲームをしたりして楽しんだ。同社の担当者は「うちのクラブではサッカーやフットサルだけでなく、例えばセパタクローなどマイナーな競技も含めて16競技やっている。生涯を通して一つの競技をやる時代は終わったと思っている。『ひのスポ』では、マイナーな競技など、子どもたちがいろいろなスポーツを経験する機会になればうれしい」と語った。
bjアカデミーの「3人制バスケ」では、12秒ルールの中でどのように自分の頭で考え、シュートまで持っていくかということを、ミニゲームなどを通してチャレンジしていた。日野キングフィッシャーズの「卓球」では、現役選手2人も参加。現役選手と打ち合い、スマッシュが決まった子どもは大喜び。卓球をやるのが初めての子どもには、打ち返す際のコツなどを丁寧に選手らが伝えていた。
参加した小学生からは「普段は選手たちと触れ合う機会があまりないので、楽しかった。こういうイベントが当たり前になっていってほしい」「今日やったスポーツ以外にも、もっとスポーツをやって楽しんでいきたい」、中学生からは「どのコーチも優しく丁寧に教えてくれたので分かりやすく、とても楽しかった」「普段できない体験で、いい経験ができた」といった声が上がっていた。
こうした子どもたちの様子を見ていた同市教委の担当者は「来年度から年間を通して毎週末『ひのスポ』が実施できるようになれば、子どもたちにとって学校以外の居場所にもなるのではないか。他校の友達もできるなど、そういったメリットも生まれることを期待している」と話した。
また、同市の堀川拓郎教育長は、この日、フットサルを体験していた女子生徒から「うちの学校にも女子サッカー部をつくってほしい」とリクエストを受けたという。「やりたい子がいても、学校の部活動としてはできないスポーツもある。でも、それが『ひのスポ』という形でなら実現できる。部活動の延長や代替という考え方だけでは、分断を生みかねない。そうではない形でも子どもたちに選択肢をつくっていきたい」と展望を語った。