優秀な教員志望者の確保には「働き方改革と待遇改善」 自民特命委

優秀な教員志望者の確保には「働き方改革と待遇改善」 自民特命委
特命委員会の冒頭にあいさつする自民党の萩生田政調会長
【協賛企画】
広 告

 教員のなり手不足や処遇改善について検討している自民党の「令和の教育人材確保に関する特命委員会」は1月31日、党本部で第3回会合を開き、教員養成に長年携わってきた加治佐哲也兵庫教育大学長と、大学と県が協働して教員志望者の確保を図っている宮崎県の日隈俊郎副知事と新地辰朗宮崎大学理事からヒアリングを行った。加治佐学長は「優秀な教員志望者を増やすためには、働き方改革と待遇改善による教職の魅力化が必須だ」と強調。元県教育長の日隈副知事らは、優秀な教員志望者を確保するために高校生の段階から教職を意識付ける宮崎県の取り組みを紹介した。

 会合の冒頭、委員長の萩生田光一党政調会長は「本委では教師の養成、採用、現職の段階を通して必要な改革案を提案していくこととしており、昨年12月の第2回では教師がやりがいを持って働くことができる環境の整備について議論いただいた。本日は、養成採用の段階に関して、教職の魅力を高め、志ある優れた人材が教師を目指すための支援策について議論いただく」とあいさつした。

 最初に報告した加治佐学長は、「優秀な教員志望者を増やす方策」として、「教師不足は少子化でやむを得ないところもあるが、そうであっても教職の魅力化は必須だ」と切り出した。これからの教員に求められる資質能力は高度化するため、優秀な人材を他の業界と奪い合うことになるとして、「教職が魅力化されない限り、(教育現場に)優秀な人材が来ない」と訴えた。

 そうした教職魅力化の方策として加治佐学長は「まず第1に働き方改革。教師がやるべき仕事が何なのかということに、社会的合意を得る必要があると強く思っている」と話した。「2つ目は待遇改善だ。給特法の枠組みを変えるのは難しいという気はするが、現在の超勤4項目と部活動などの自発的活動の再定義が必要になる」とした上で、「ただし(現在4%の)教職調整額が1、2%上がったとしても一人一人の教員にとってはそれほど魅力的かと言うと、そうでもない」と述べ、現実的な対策としてメリハリをつけた手当の拡充が望ましいとの考えを示した。

 「本来の在り方は、やはり業績・能力に応じた待遇だ。そのためには、校長は労務管理をしっかりやる。それから教員評価を徹底するということが追求されなければいけない」と指摘。「中核となる先生は教職大学院を修了してほしい。これから養成数は減るので、量的により多くの時間をかけた養成が現実化するのではないか」との見通しを語った。

 加治佐学長は国立教員養成大学・学部の改革にもふれ、教員就職率が向上しないという問題点を指摘した。加治佐学長によると、この10年あまり国立の教員養成大学・学部卒業者の教員就職状況は70%前後であまり変わっていない。一方で兵庫教育大では80%から90%で推移している。この理由について「全受験者に以前から教員志望理由書の提出と面接を課している。それと校長出身のキャリア開発指導員を採用し、大学教員と連携・協働して一体となって就職の支援や指導を行っている」と述べ、学生を育成して教員にするという教員養成大学のミッションが徹底される土壌の重要性を強調した。

 また11ある国立教員養成大学の経営力を強化するため、「日本教育大学機構というような法人化を図り、権限と機能を集中させるべきだ」といった提言も行った。

 続いて、宮崎大学と宮崎県との協働による教員の確保と資質・能力向上について新地理事と日隈副知事が報告した。

 元県教育長を務めていた日隈副知事は、県と宮崎大学との連携について、毎年度両者からなる会議体でそれぞれの課題について検討し、解決に向けた具体的な取り組みを行っている状況を説明。同県でも小学校教諭の競争倍率は2022年度は1.5倍まで下がってきている状況であり、教員を希望する優秀な新規学卒者の確保が最重要課題として挙がっている、と実情を述べた。

 優秀な教員志望者を確保するため同県が取り組んだのは、高校生に対する教職への意識付けだった。日隈副知事は「生徒たちにキャリアデザインとして、どういう形で将来の仕事として学校の先生になるのかという意識を持ってもらうというところから進めてきた」と話した。新地理事はもともと宮崎大学も教員就職率が苦戦していたという過去を挙げ、「最近まで全国平均を下回っていたが、22年3月の段階では全国5位までたどり着いた。この間、毎年200人程度県内の教職を考えている高校生を集めて話をしてきた。その結果、教育学部の県内出身者は40%程度から53%程度まで上昇してきた」という。

 さらに教育学部に、小学校教員を目指す県内の受験生を対象とした独自の「宮崎県教員希望枠」を設定。16年度から実施し、毎年枠を増加している。新地理事はこの制度について「入試段階から教委にも入ってもらい、入学後も大学の教員と一緒に助言、指導を行う関係を構築している」と強調した。ただ問題点として、学年の進行とともに教職志向が落ちるという傾向があり、これに対しては「教師セミナーで教員希望枠の学生を対象に年間を通して教委と大学で指導する」など、さまざまなシーンで両者の協力で学生の教職志向を支える仕組みがあることを紹介した。新地理事は「宮崎県と連携して熱意のある学生にやりがいのある教職をしっかり分かってもらい、努力のできるタフな人材に育てたい」と結んだ。

 特命委では、今後も有識者などからヒアリングを重ね、4~5月ごろに基本的な方向性をとりまとめる見通し。結論を6月ごろに政府が閣議決定する「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)に反映させたいとしている。

広 告
広 告