学校施設の水害対策を報告 文科省が防災セミナー

学校施設の水害対策を報告 文科省が防災セミナー
セミナーでは、東日本台風で浸水被害を受けた郡山市内の学校の様子が報告された
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 近年の激甚化、頻発化する豪雨などにより、学校施設でも大きな被害が発生している現状を踏まえ、文科省は2月7日、「学校施設の防災対策セミナー2022」をオンラインで開催した。国交省と文科省の担当官が国の取り組み状況を説明した後、近年の台風や豪雨などで学校施設が浸水するなどの被害を受けてきた福島県郡山市と熊本市が、これまで進めてきた学校施設の水害対策について報告した。

 2021年5月に制定された流域治水関連法により、学校施設においても水害に対する被害低減の取り組みが求められている。文科省によると、全国の公立学校3万7374校の約20%にあたる7476校が浸水想定区域に立地している。これらの学校では、ソフト面の対策は避難確保計画の作成(85.1%)、避難訓練の実施(71.9%)などが進んでいる一方、ハード面の対策では学校施設内への浸水対策(14.7%)、受変電設備への浸水対策(15.0%)などと対応の遅れが目立っている。

 文科省の「学校施設等の防災・減災対策の推進に関する調査研究協力者会議」では、昨年6月に「水害リスクを踏まえた学校施設の水害対策の推進に向けて」の中間報告を取りまとめた。今後の学校施設の水害対策の基本的な視点として、▽流域治水等に対して学校施設が担う役割▽水害リスクを踏まえた対策の実施▽学校設置者と治水担当部局や防災担当部局等の連携体制の構築▽学校施設における土砂災害防止対策の実施━━を挙げた。現在、最終報告に向けて2市でケーススタディを実施しており、対策の手順などを整理している。

 この日のセミナーで、同省の担当官は「どの自治体においても実施しやすい対策の手順となるよう、自治体の連携体制の整備や、ハザード情報と学校の位置関係などの整理などについて、検討を行っている」と説明した。

 続いて、郡山市と熊本市から学校施設の水害対策について事例紹介が行われた。

 郡山市では市の中心を阿武隈川が流れており、10年に一度ぐらいの頻度で水害が発生している。特に19年10月の東日本台風における水害は過去最大で、市立永盛小学校、市立赤木小学校、市立小泉小学校が浸水するなどの被害を受けた。

 例えば、赤木小学校は東日本台風の際、校内の廊下の浸水痕が1.6㍍と、1階の教室や給食室、職員室などに大きな被害が出た。同校は12月下旬までは全学年が他校で授業を受け、年が明けて20年1月からは自校の2、3階で授業を受けるなどしながら、3月に復旧した。

 郡山市教委教育総務部総務課の阿蘇慎二施設管理係長は、「もともと1階にあった職員室や教室を2、3階に移動し、1階が浸水しても授業がスムーズに再開できるように配置転換した。また、1階の床はフローリングからビニール床シートへ改修したことで、再び浸水したとしても、拭き上げるだけで再利用できる。一番大きな被害を受けた受変電設備については、かさ上げを行った」とその後の浸水対策について報告した。

 熊本市でも、12年の九州北部豪雨など、風水害が相次いでおり、市の中心部を流れる白川水系と、南部を流れる緑川水系の流域にある学校では、さまざまな水害対策が取られている。

 白川水系の坪井川に隣接する市立竜南中学校は、ハザードマップでも浸水地域に該当しているが、学校敷地内に高低差があまりないので、全ての建物がかさ上げする対策が取られている。また、健軍川が近接する市立健軍小学校は、河川へ校内の雨水放流負荷を低減するよう、運動場に貯水浸透機能を持たせている。

 熊本市教委事務局教育総務部学校施設課の佐﨑正尚課長補佐は、「健軍川流域の他の3校でも同様の事業が完了しており、さらに流域の他学校でも同様の整備を予定している」と今後の計画について話した。

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