児童手当含め「高校生への経済的支援を」 こども政策関係府省会議

児童手当含め「高校生への経済的支援を」 こども政策関係府省会議
経済的支援の強化についてヒアリングが行われた関係府省会議
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 岸田文雄首相が掲げた「異次元の少子化対策」を検討する、政府の「こども政策の強化に関する関係府省会議」の第2回会合が2月7日、開催された。岸田首相が基本的な検討事項の一つに掲げる児童手当を中心とした経済的支援の強化について、3人の有識者にヒアリング。児童手当の高校生への拡充や公的投資の拡大による公立学校の教育充実といった意見が出された。

 会議の冒頭、小倉将信こども政策担当相は「少子化の背景には、個々人の結婚や、子育ての希望の実現を阻むさまざまな要因がある。社会経済情勢が変化をしている中で、重点的、抜本的に取り組むべき政策も変化している。重要なのはそれぞれの庁や局の立場を離れて、オールジャパンで一丸となってしっかり議論すること。3月末を目標に取りまとめるたたき台にしっかりと生かす」とあいさつした。

 この日は、▽中京大学現代社会学部 松田茂樹教授▽東京大学大学院経済学研究科 山口慎太郎教授▽NPO法人キッズドア 渡辺由美子理事長――の3人が、経済的支援の観点から少子化対策について意見を述べた。

 渡辺理事長は、出産数増加と同時に数年先の労働力を確保する必要があると指摘。児童手当がなくなることは、部活動や受験を諦めるきっかけになるとして、高校生までの児童手当延長を対策の一つに挙げた。

 さらに、「大学無償化や奨学金の拡大だけでは、高校生の差は埋まらない」と述べ、児童手当の給付に加え、授業料以外の教育費を支援する奨学給付金や受験料支援などを通して高校生の希望を作ることが重要だとした。

 松田教授も現金給付の拡充は必要とした上で、「王道は児童手当」と強調。渡辺理事長と同様に高校生への拡充を求めた。さらに、「日本の家庭の出生、就労パターンは東アジアの中で多様」と述べ、教育も含めた子育て支援を子供の自立までワンストップかつ、全ての家庭に行う「総域的」なアプローチが必要とした。

 児童手当について、「それほど強い効果はないと認識している」と述べ、有効性は限定的とした山口教授は少子化対策の一つとして、公立学校における教育の充実を提言。「社会における格差縮小に非常に有効。特に低所得世帯は公立学校の教育に大きく依存する」として、OECD諸国で最低基準である教育機関の公的支出増加を求めた。

 また、財源については、幅広い層が負担できる消費税が「一番すっきりする」と述べる一方、国民の支持を得にくいとして、社会保険料の拡大も可能性として考えられるとした。その際も、「現役世代に負担が集中しないようにデザインしてほしい」と念押しした。

 会議終了後の担当者による説明会によると、2024年度開始を目指している給付型支援金の中間層への拡大や「出世払い型奨学金」の受け止めについて、委員から質問があったという。

 これに対し、渡辺理事長は「高等教育における支援というのは非常にありがたい。財源があれば無償化が望ましいが、中間層に広げるのはいい方向」と好意的だったという。山口教授も「出生率との関連はよく分からない」と前置きした上で、大学卒業後のリスク軽減として「出世払い型奨学金」は有効とした。一方、松田教授は自身の研究結果を参考に、入学金や授業料軽減は少子化対策の効果が期待できるものの、奨学金については疑問を呈したという。

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