左官や警備など教員が職業体験 高卒就職のミスマッチ防ぐため

左官や警備など教員が職業体験 高卒就職のミスマッチ防ぐため
「こて」を使って木の板に石こうを塗り付ける高校職員
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 高校生の求人倍率が1988年以降、最高水準になる中、来年度に卒業する高校生に向けた高校教員と地元企業との交流会イベント「先生Fes」が2月10日、東京都千代田区の秋葉原ダイビルで開かれた。関東の15社が一堂に会し、左官や警備などの体験ブースを用意。会場に訪れた教職員は、実際に使っている道具に触れて、業界への理解を深めていった。今後、2月24日まで、全国5会場で行われる。

 厚労省によると、今年3月に卒業する高校生の求人倍率は7月末現在で、3.01倍。92年に次ぐ高水準となっているものの、同省が去年10月に公表した「新規学卒就職者の離職状況」によると、1年以内の離職率は16.3%。大学卒に比べて4.5ポイント高くなっており、早期離職が課題になっている。

 その理由の一つが、企業理解が十分でないまま就職してしまうこと。一般的に学校によるあっせんで行われる高校生の就職活動は高い内定率や丁寧な進路指導といったメリットがある。一方で、就職活動が短期間なことや、ほぼ内定を得られる代わりに企業を1社しか受けられない「1人1社制」といった就職慣行がミスマッチにつながっていると考えられている。

 ジンジブが企業の高校新卒採用の担当者348人に、今年度の採用活動で特に苦戦したところを尋ねたところ、「高校訪問」(31.3%)や「先生との関係構築」(29.6%)が上位に挙げられた。同社の星野圭美取締役は「高校生の就職活動は教員の情報が鍵となる中で、民間企業での仕事経験が少ないため、情報がバージョンアップされないという声もある。実際に仕事に触れてもらうことで、業界のことをより深く知ってもらおうと思った」とイベントの狙いを説明した。

 この日は建設業や介護、警備など15企業が参加した。埼玉県三芳町の建設業、ギノウスが行ったのは左官体験。「こて」と呼ばれる道具を使って、壁に見立てた木の板に石こうを塗り付けていく。教員は慣れない道具に悪戦苦闘しながらも、笑顔を時折見せて作業していた。

 左官体験をした広域通信制高校の第一学院高校の職員、長利陸矢さんは「生徒には楽しめる仕事についてほしいと思っている中で、自分が実際に体験することで、より正確に面白さを伝えることができる」と述べた。

 セントラル警備保障(本社:東京都新宿区)のブースで行われた警備体験では、教員が約10㌔の防弾チョッキを着用。担当者に「肘、肩、膝を狙う」や「使用前には3回、相手に注意を呼び掛ける」といったルールを教えてもらいながら、手にした警棒を実際に振った。

防弾チョッキを着用して、企業担当者(左)から警棒の使い方を教わる高校教員
防弾チョッキを着用して、企業担当者(左)から警棒の使い方を教わる高校教員

 警備を体験したあずさ第一高校渋谷キャンパス(東京都渋谷区)の浦野敦史教諭は「防弾チョッキは思ったよりも動きやすかった。ずっと教員をやっていたので、世の中の職業のことがあまり分かっていない部分もある。生徒にフィードバックする上で役に立った」と話した。

 このほか、参加した企業は新卒社員に実際に行っている研修の内容や自社製品を見せるなどしながら、教職員に自社をアピールしていた。

 今年の先生Fesは3日の堺市会場を皮切りに、この日の東京会場で3会場目。今後は▽14日、千葉会場(山崎製パン企業年金基金会館陽光ホール・市川市)▽15日、大阪会場(AP大阪駅前APホール・北区)▽16日、名古屋会場(ウインクあいち・中村区)▽22日、福岡会場(天神ビル・中央区)▽24日、神奈川会場(関内新井ホール・横浜市中区)――で開催される。

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