政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は2月10日、卒業式において「マスクを着用せずに出席することを基本」と決定した。これを受け、永岡桂子文科相は同日夜に臨時記者会見を開き、卒業式の具体的な場面でのマスクの取り扱いについて、「児童生徒および教職員については、校歌などの斉唱や合唱時を除き、マスクを外すことを基本とする」ことを表明した。また、4月1日以降の新年度については「学校教育活動の実施に当たり、マスクの着用は求めないことを基本とする」と述べた。衛生管理マニュアルの取り扱いなど、4月1日以降の留意事項は改めて周知するとしている。文科省は同日、こうした内容を都道府県・政令市の教育委員会に通知した。
永岡文科相は会見で「卒業式については、他の学校教育活動と比べて感染リスクが低い。また、今年卒業を迎える子供たちは学校生活の大半をコロナ禍で過ごしてきたことなどを踏まえ、その教育的意義も考慮し、社会一般でのマスク着用の見直し時期に関わらず、換気の確保などの感染症対策を講じた上で、児童生徒と教職員はマスクを着用せず、出席することを基本とした」と説明した。
また、マスク着用の考え方の見直しについて、政府の対策本部が3月13日から適用すると決めたことを受け、「学校については、その時期が学年末に当たることなどを考慮して、円滑な移行を図る観点から、新年度となる4月1日から適用することとする。学校教育活動の実施にあたり、マスクの着用は求めないことを基本とする」と述べた。
文科省が発出した通知によると、卒業式は児童生徒が厳粛で清新な気分を味わい、学校生活を振り返るとともに、新しい生活の展開への動機付けの機会ともなる有意義な教育活動であることから、「児童生徒および教職員は、式典全体を通じてマスクを着用せずに出席することを基本」と明記し、児童生徒がマスクをせずに式に出席できることを基本的な考え方とした。来賓や保護者についてはマスクを着用するとともに、座席間に触れ合わない程度の距離を確保した上で、参加人数の制限は不要としている。
具体的な場面では、児童生徒の入退場時、壇上での校長による式辞や来賓による祝辞の場面、卒業証書授与時、在校生送辞・卒業生答辞の場面などは、周囲との十分な身体的距離が確保できることからマスクは外しても問題ないとされた。一方で国歌・校歌の斉唱や合唱を行う時、複数の児童生徒による、いわゆる「呼び掛け」をする時は、マスクの着用など一定の感染症対策を講じた上で実施するよう求めた。
通知では、卒業式の実施にあたって換気対策機器の活用による効果的な換気の実施や参加者への咳エチケットの推奨、手の消毒や手洗いなど必要な感染症対策を講じることとしたほか、基礎疾患があるなどさまざまな事情で感染不安を抱き、マスクの着用を希望したり、健康上の理由でマスクを着用できなかったりする児童生徒に対して、学校や教職員がマスクの着脱を強いることのないようにすること、児童生徒の間でもマスクの着用の有無による差別・偏見等がないよう適切に指導することなどを留意事項としている。
政府の対策本部の決定では、4月1日以降の新学期について「学校教育活動でマスクの着用を求めないことを基本とする」としているため、3月31日までの年度内における卒業式以外の学校教育活動においては、これまで通り文科省の「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」に従うこととなる。
政府は1月27日に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けを5月8日以降、2類から5類に変更すると発表した際、屋内でのマスク着用について「行政が一律にルールとして求めるのではなく、個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねることを基本として検討」としており、卒業式でのマスクの取り扱いに注目が集まっていた。今回の政府決定で卒業式でのマスク非着用が可能となったが、依然として教育現場では式典などでの感染リスクへの警戒感もあり、今後、各教委、各教育施設での対応が分かれる可能性もある。