男子校に通う中学生と女子大に通う学生が一緒にジェンダー平等について考えるプロジェクトが2月20日、昭和女子大学(東京都世田谷区)で開かれた。同校の1~4年生24人と、同区の駒場東邦中学校(小家一彦校長、生徒721人)の3年生約240人が参加。真逆の立場の学生と生徒が一堂に会し、男女別学の必要性や男女が働きやすい職場環境についてのワークショップとディスカッションを行い、相互の理解を深めた。
両校は昭和女子大学のジェンダー平等を考えるセミナーに駒場東邦中学校の生徒と教員が参加したことがきっかけで、2021年から多様性への理解に対する共同企画を開始。同年はジェンダーや多様性の捉え方に関する変化を、ディズニープリンセスの性格や肌の色などの変遷を通して学習。22年は風情とバリアフリーの共存などを題材に、異質な価値観や境遇を持つ他者理解に取り組んできた。
今回は集大成として、「男女別学」と「男女が共に働きやすい職場」について、クラスごとに分かれてグループワークを行った。
グループワークは昭和女子大学の学生が駒場東邦中学校の生徒に授業をする形で行われ、男女別学については、まず江戸時代から昭和初期にかけての男女の教育における違いを解説。かつての日本で女子に中等教育を行っていた教育機関、高等女学校では「裁縫」や「家事」の科目が設けられるなど、当時は男女の役割を顕著に表した授業がされていたことを説明した。
続いて、生徒が男子校に進学したメリットや理由を話し合った上で、男女別学が必要かどうかグループで意見をまとめた。必要としたグループは「異性の目を気にしなくてもいい」や「異性が苦手な人にとって心地良い居場所だし、異性がいるありがたみも感じることができる」などを理由にした。一方、不要としたグループは「女子がいた方が彼女を作ろうというモチベーションで勉強も努力すると思う」や「共学の方が緊張感もあるし、悪乗りで勉強に集中できないということがない」などを挙げた。女子大生はリハーサルで同様のディスカッションをした際に、「伸び伸び学べる選択肢がある中で、わざわざ消す必要はない」などの理由で全員が必要と答えたという。
男女の仕事・役職について理解を深めるワークショップでは、男性社員8割、女性社員2割の商社の経営者になった設定で「妊娠中、育児中、介護が大変な社員」が働きやすい職場を作るために、どのような制度が必要か考えた。生徒らは「女性の考えていることが分からないので、女性の役員を登用する」や「何時で帰るか自分で決められる制度を導入する」といったアイデアを提案。その後、著名な企業が取り組んでいるフレックスタイム制などの職場改革を学び、男女が共に働きやすい職場環境について学習した。
このほか、女性トイレに生徒が実際に入って見学。「個室しかない」「男性用のより広い」といった男性トイレとの違いを感じるだけでなく、生理用品を捨てるゴミ箱についても学生から動画で説明を受けるなど、女性ならではの設備についても学んだ。
参加した生徒は「1年生に初めて受けた時はアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)という言葉も分からなかったけれど、3年間やることで理解できた。企業に就職したときに役立てたい」や「授業を受けてから、日々気にして見てみると、病院だと医者は男性、看護師は女性といったように、さまざまな場面で男女の差があることに気付かされた」「保健の授業で習った生理用品を捨てるためのゴミ箱も実際にみることで、女性は大変なことをしていると改めて実感できた」といった感想を話した。
自身も中高を男子校で過ごした駒場東邦中学校の向井恒爾学年主任は「女子がいないのは気楽だと感じる生徒もいる反面、昔ながらの男性本位のジェンダー観が育ってしまったり、逆に女性を神聖化してしまったりするなど、いびつな価値観が生まれる可能性もある。将来社会に出る上で、なるべく早い段階で気付くチャンスを与えたかった」と意義を語る。
一方、保育士を目指しているという昭和女子大3年の山名はるかさんは「授業の資料を作っている中で、私自身も男性に偏見を抱いていることに気付かされた。子供たちも男の子、女の子というくくりで見るのではなく、一人一人見ていきたい」と語るなど、学生にとっても有意義な時間になったようだった。