東京都練馬区立石神井台小学校(町田浩一校長、児童531人)では2月、6年生の総合的な学習の時間にさまざまな経歴を持つ5人のゲストティーチャーから学ぶ授業「ステキな大人Week!」が実施されている。授業を企画した二川佳祐教諭は「多様な大人から刺激を受け、自分はどんな人に憧れたり、引かれたりするのかを感じ、自分がこれからどう生きるかを考えてほしい」と話す。2月16日には第4弾として、「未来をつくるkaigoカフェ」という活動を行っている高瀬比左子さんらが、介護の仕事のやりがいや魅力、地域づくりをテーマにした対話型の授業を行った。
冒頭、高瀬さんは「未来を考える時に、日本では切っても切れないのが少子高齢化の問題。君たちにも『介護』という言葉が身近なものとなっていく」と語り掛けた。子どもたちに「介護」に対する印象を聞いたところ、「おじいちゃん、おばあちゃんの生活をサポートすること」「なんか大変そう」といった発言が。高瀬さんは「一言で『介護』と言っても、いろいろな仕事があるのだな、面白そうだな、と今日はみんなに感じてほしい」と話し、共に授業を行う3人のメンバーの仕事内容ややりがいについて紹介していった。
訪問介護の仕事をしている工藤勇希さんは、仕事内容について「トイレやお風呂、食事の介助など、普段の生活のサポートをしている」と説明。以前はグラフィックデザイナーだった工藤さんは、たまたま友人に誘われたことから介護の世界に入った。そのやりがいについて「自分を待ってくれている人がいる。人から感謝されることに喜びを感じる」と話した。
また、訪問美容業務などを行う会社を立ち上げた湯浅一也さんは、高齢者や介護が必要な人たちの自宅などに訪問し、カットやカラーリング、シャンプーなどのサービスを提供している。「移動式のシャンプー台を持ち込んで、美容院で受けられるようなサービスを家でもできるようにしている。きれいになって喜んでもらえた時にやりがいを感じる」と話した。
介護関連の会社を立ち上げながら、介護施設でも働く奥平幹也さんは、仕事のやりがいについて「認知症の人などはいつも不安を抱えている。それをどう受け取って、どう返すか。自分の対応によって、その人の表情が和らいだりするとうれしい」と語った。
続いて、子どもたちに「みんなの好きなことや得意なことは何ですか」と問い掛けた高瀬さん。子どもたちからは「絵を描くこと」「バスケットボール」「ダンス」など、さまざまな答えが返ってくる。高瀬さんは「ネイルが得意な人が介護施設でネイルをしたり、音楽が得意な人が介護施設で演奏したり、今、介護の世界は『○○×介護』というように変わってきている。だから、みんなの好きなことや得意なことも生かせる仕事になるかもしれない」と話すと、子どもたちは大きくうなずいていた。
ここからはグループワークに挑戦。今、介護施設が地域の拠点となっているところも増えていることが紹介され、子どもたちには「困った時に助け合える関係をつくるには、地域の人とつながる必要があるが、そのためにどんなアイデアがあるか」という問いが投げられた。子どもたちは5、6人の班になって、そのアイデアを考えていった。
その後、各班からさまざまなアイデアが発表された。ある班は「一緒にお祭りや、忘年会みたいなイベントをする」と発表。また、別の班からは「高齢者のリアル人生ゲームをつくって、みんなでやってみる」という斬新なアイデアも発表された。他にも「昔の映画をみんなで鑑賞する会」「昔の遊びと今の遊びを両方やるイベント」「自然と触れ合えるキャンプを企画する」「おじいちゃんやおばあちゃんの生活を伝えるYouTubeをつくる」など、次々とアイデアが共有された。
高瀬さんたちは「私たちが思い付かないようなアイデアがたくさん出てきてうれしい。何か形にしていけたら」と笑顔を見せていた。
授業後の子どもたちの振り返りでは、「介護の仕事は大変なイメージがあったが、今回の授業を聞いて、好きなことや得意なことを生かして介護の仕事に取り組んでいる人も多いことが分かった」「介護は高齢者を助けるだけの仕事だと思っていたが、美容やネイルなどいろいろな仕事があることを知って、介護に少し興味が湧いた」「介護の世界は広い!」といった感想が上がっていた。
高瀬さんは「子どもたちの中でも介護に対する理解が進んでいると感じている。また、『共生』という発想もどんどん進んできている。介護施設や福祉施設が、みんなが混ざり合う拠点になっていけたら」と話し、今後については「子どもたちだけでなく、親世代の介護に対する意識を変えていく必要もあると感じている」と意欲を見せた。
同校では、近くカナダ在住のネイチャーガイドなどを務める田中康一さんとZoomでつないだ「ステキな大人Week!」最終回の授業が行われる。その後、6年生は「自分とは」をテーマに考えをまとめ、3月中旬に各1分間のプレゼンテーションを行う。保護者ともZoomでつないで、子どもたちの発表を見てもらう予定だという。