4年目となる「未来の教室」 今年度実証事業の成果を報告

4年目となる「未来の教室」 今年度実証事業の成果を報告
「未来の教室」実証事業の成果について話す五十棲教育産業室長(YouTubeで取材)
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 民間と学校などが連携して新しい学び方を模索する経産省の「未来の教室」実証事業の今年度最終報告会が3月2日、オンラインで開かれ、今年度の実証事業に取り組んだ企業・団体が成果をプレゼンテーションした。小規模な高校同士での留学やメタバースを活用した不登校支援、図書館に3Dプリンターなどの最新機器を置き、子どもたちが自由に創作活動に使えるようにした取り組みなどが紹介された。

 「知ること」と「創ること」の往還をコンセプトに、GIGAスクール構想による1人1台の学習者用端末とEdTechを活用したこれまでにない学びの在り方を試みる「未来の教室」実証事業は、今年度で4年目を迎える。この日の最終報告会では「多様な学びを実現する制度・方法の検証結果」「学校におけるSTEAMライブラリー活用事例の共有」「今年度創出したサードプレイスと今後の普及・拡大方針」の3つのパートに分かれて、実証事業に参加した企業や団体が発表を行った。

 地域・教育魅力化プラットフォームは、小規模な高校同士がつながり、デジタルも活用しながら各校の特色ある教育を生徒が相互に学んだり、留学したりできるコミュニティー「みらいハイスクール」を構想している。

 同プラットフォームの丸谷正明さんは、高校間の留学を行う場合のネックとして、教育課程が異なり、必履修科目が履修できなくなってしまうケースがあるとし、通信制でその科目を履修することで解決できるものの、制度自体の認知が進んでいないと指摘。「実際に通信制で一部科目を履修した生徒は『私のわがままにいろいろな人が協力してくれて、すごくありがたいです』と言ってくれて、うれしい一方で、生徒のわがままではなくて、やりたいことを当たり前にできる選択肢をつくっていける状態を目指していきたい」と意気込んだ。

 十分な人的リソースが少ない地域での不登校支援を可能にするため、カタリバではメタバースを活用したシェア型オンライン教育支援センター「room-k」を展開している。カタリバのコーディネーターが個別支援計画を立て、メンターがリモートで不登校の子どもたちに伴走支援しながら、メタバース上の学習コンテンツに誘う取り組みで、学校との定期的な情報共有も重視しているという。

 事業内容を説明したカタリバの萬代奈保子さんは課題として、「先生方の安心や信頼を獲得し切れていない現状がある」と指摘。「保護者案内用のパンフレットの準備はあるが、そのツールを基に日々多忙な先生方に自発的な理解を求めること、スタッフが説明を行うことにも限界がある。多忙な先生方にも『room-k』に対して理解や共感をしてもらい、連帯意識を持っていただくことを目的とした動画の作成に着手している」と話した。

 steAmの中島さち子代表取締役社長は、近年欧米を中心に図書館が知識を受け取る場としてだけでなく、知識を生み出す場として、新しいテクノロジーに触れる能動的な役割が求められるようになっているとして、日本でも公立図書館に3Dプリンターやプログラミング教材などを置き、子どもたちが自由に創作できるイベントを複数回実施したことを紹介。「図書館のような誰もが気軽にアクセスできて、子どもだけでなく大人も一緒になって行けるような公共の場に、モノづくりの機械が置かれて、複数の学校が共有して使ったり、新しいテクノロジーや慣れないものに出会ったりする。勉強というよりも、私たちは遊び場としての意味から『STEAMプレイグラウンド』と名付けているが、そういう場所があると、これからの探究やプロジェクト型学習にも実際に生かされるのではないか」と呼び掛けた。

 各発表を終えて、「未来の教室」実証事業を担当する経産省商務・サービスグループサービス政策課の五十棲(いそずみ)浩二教育産業室長は「GIGAスクール構想が一気に進み、小中学生に1人1台端末が整うことになり、学びの探究化、STEAM化、学びの自律化、個別最適化という未来の教室が掲げていたコンセプトが徐々に広がってきた。それがこの4年間ではないかと思っている。この状況をさらに今度はGIGAスクールを本当の意味で定着させていく、これが今後の課題だと思っている」と、この4年間の成果を振り返った。

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