参議院文教科学委員会が3月8日開かれ、埼玉県戸田市の市立中学校で、校内に侵入した男に男性教員が刃物で切り付けられ、けがをした殺人未遂容疑事件に関連して、永岡桂子文科相はこれまでの学校安全対策について「不審者侵入時の対応方法等についての教職員向け講習会実施への支援、スクールガードリーダーによる各学校への巡回指導への支援などに取り組んできた」と述べ、今後も学校安全に向け必要な対応を取っていくと述べた。この事件を受け戸田市教委では市内の小中学校に対して、各校の危機管理マニュアルを国のガイドラインをもとに見直すよう通知。さらに戸ケ﨑勤教育長名で市内の小中学校の児童生徒に向けて「いのちのメッセージ~あなたは1人ではない~」とするメッセージを発表している。
学校保健安全法では、学校に対して児童生徒の安全を確保するため、危機管理を具体的に実行するために必要な事項や手順を示す「危険等発生時対処要領」(危機管理マニュアル)の作成を義務付けている。このマニュアルは学校で実施した訓練の検証結果や、国内外で発生した事故・災害事例などを基に常に見直しや改善を行うことが必要とされ、文科省ではその際の評価の観点(チェックリストや考え方)、その他の参考となる情報などの提供を目的にガイドラインを示している。
この日の文教科学委で、立憲民主の熊谷裕人議員から事件への対応を問われた永岡文科相は「文科省としてはこれまでも危機管理マニュアルに関し、その評価と見直しのガイドラインを示すとともに、不審者侵入時の対応方法などの教職員向け講習会実施への支援、警備のポイントや防犯上の改善点について、スクールガードリーダーによる巡回指導の支援などに取り組んできた。教委からの相談があれば、きめ細かく対応したい」などとして、警察による捜査を待ち、正確に事実関係を確認した上で、今後の学校の安全対策について必要な対応を取っていくとした。
また事件を契機に、戸田市教委では各小中学校の危機管理マニュアルについて、国のガイドラインに沿って改めて見直すよう指示。3月2日には児童生徒の心のケアを目的として、戸ケ﨑教育長のメッセージを発表した。
ニュースを見て不安に思った児童生徒に向けて同メッセージでは、「あなたは、たくさんの大人に見守られて生活しています。学校では先生たち、学校の外では家族や地域の人たちが、あなたのことを気にかけてくれています。あなたは1人ではありません」と呼び掛け、「もし不審者にあってしまったときは、自分の身は自分で守ることもとても大切なことです。防犯ブザーを鳴らしたり、大声で助けを呼んだりして、子ども110番の家や近くのお店、おうちににげるようにしましょう」と具体的な行動を示している。
保護者に対しても事件後、児童生徒に対して学校配置のスクールカウンセラーや相談員、市教育センターの心理カウンセラーを活用して心のケアにあたっていることや、警察・地域と連携して登下校時に見守りの強化を行っていることを説明している。