アウトプットは放っておいて 地域ICTクラブが全国シンポ

アウトプットは放っておいて 地域ICTクラブが全国シンポ
郡上ICTクラブの活動を紹介する赤塚さん(YouTubeで取材)
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 地域で子どもたちがプログラミングを学べる「地域ICTクラブ」について、総務省は3月10日、全国シンポジウムを開き、各地の地域ICTクラブの活動紹介やユニークなロボットを開発・販売するユカイ工学の青木俊介CEOによる基調講演が行われた。活動紹介の中では、高校生が主体になってPBLに取り組んでいる岐阜県の郡上ICTクラブについて、同クラブ学生代表で角川ドワンゴ学園N高校2年生の赤塚朔さんがプレゼンテーション。地域ICTクラブに関わる大人が子どもとどう関わっていくかについて、「インプットのときはとことん世話を焼き、アウトプットのときはとことん放っておいて」と呼び掛けた。

 小学校などでプログラミング教育が導入されたことに呼応し、学校外でも子どもたちがプログラミングに慣れ親しむ場をつくろうと始まった地域ICTクラブは、2018年度から19年度にかけて全国40カ所で実証事業を行い、20年度以降は実証事業の成果を踏まえた普及促進に取り組んでいる。シンポジウムはそうした全国の地域ICTクラブのネットワークを広げることを目的に開催された。

 基調講演に登壇した青木CEOは、自分自身のプログラミングとの出合いや起業の経験を振り返り、ネコのような尻尾が動くクッション型癒やしロボットなど、独創的で話題性のあるロボットを社員がどのように生み出しているかを紹介。小学1年生くらいの子どもでも、ハサミを使った工作感覚でオリジナルのロボットができる教材開発にも取り組んでいるといい、「プログラミングやロボット制作を習い事のように教えるのではなく、『このロボットをこう動かしたい。それならばプログラミングが必要だ』と、プログラミングにワクワクしてもらいたいという思いから開発した。正解のない、マニュアルのないものなので、子どもによって千差万別な生き物が生まれる」と話した。

 各地の地域ICTクラブの活動紹介では、赤塚さんが郡上ICTクラブの特徴を説明。郡上市内にあるコワーキングスペースを拠点に、そこで働くエンジニアがメンターとなって、高校生らに地域課題を解決するために必要な考え方やICTの技術を提供しつつ、子どもが運営面も含めてプロジェクトを動かしているという。赤塚さんは、オンラインを有効活用し、郡上市の外からも多数の参加者がいる郡上ICTクラブを「私たちのような、いわゆる田舎の人でも、都市部の感性や意識を吸収しながら、一緒に学ぶことができる。全国の中学生や高校生がボーダレスに集まって活動している場所だ」と胸を張った。

 その上で、高校生から大人へのメッセージとして「インプットのときはとことん世話を焼き、アウトプットのときはとことん放っておいてほしい」と強調。その意図を「生徒は最初、何も持っていないところから始まる。そこでは大人が持っているノウハウを思いきりたたき込んでほしい。そうすると技術やスキルを私たちは覚えていく。そのスキルは使わないと身に付かない。だから、アウトプットの場所が必要だ。その後はもう、放っておいてほしい。覚えたことを生かして、自分の力を試したり実践したりしてみたいと生徒は思う。その感情が私たちの主体性となる。そこでは、大人は見守っているだけでいい。私たちは制限なくやりたい。大人が世話を焼いてくれるのはありがたいことではあるが、生徒にとってかえって制限になることもある」と語った。

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