いじめの認知件数が過去最高となる中、文科省は3月10日、いじめによる自死や長期間の不登校といった「重大事態」について4月から、発生した場合は速やかに文科省に報告するよう、全国の教育委員会などに通知を出した。新たに創設されるこども家庭庁とも情報を共有し、その後の調査への助言や必要な対策につなげる方針。
いじめ防止対策推進法では、重大事態は「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがあると認める」および「いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間、学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認める」事態と定義している。
また、重大事態が発生した場合は教育委員会や学校が弁護士や精神科医など専門家からなる第三者委員会を立ち上げ、調査することとしている。しかし、2月に行われた関係府省会議では、調査の開始が遅れることで、被害児童生徒や家族が不信感を抱くほか、調査の助言に必要な情報が国に集約されていないといった課題が報告されていた。
今回の通知では4月1日以降、教育委員会等が重大事態の報告を受けた場合、事態の概要や被害・加害児童生徒に関する情報、学校や設置者の対応などについて、文科省に報告するよう求めている。同省はこれらの情報を活用し、調査の運用改善を行うほか、こども家庭庁とも情報を共有。調査を行う自治体の要請に応じて、同庁が任命した学識経験者などの「いじめ調査アドバイザー」が第三者委員会の委員人選の助言を行う。
文科省によると、2021年度のいじめ認知件数は61万5351件で過去最多。小学校では50万562件と初めて50万件を上回った。小中高で705件が確認された重大事態についても小学校は314件と、中学校の276件を初めて超えており、小学校の増加が目立っている。