千葉県佐倉市教委に勤務していた男性=当時(50)が10年前に自死したのは、長時間労働や上司によるパワハラが原因だとして、男性の妻が佐倉市を相手取り、慰謝料など約1億3410万円の損害賠償を求めて裁判を起こし、第2回弁論が3月14日、千葉市中央区の千葉地裁(内野俊夫裁判長)で開かれた。この日は被告である佐倉市の代理人が初めて出席。原告側によると、市側は自死につながる長時間労働はなかったと主張。請求棄却を求め、争う姿勢を示している。
原告側によると、男性は1988年4月に千葉県教育委員会に中学校の理科教員として採用。同県内の3つの中学校で勤務した後、2009年4月から佐倉市教委指導課に配属された。13年12月頃に精神障害を発症。同年12月27日に自死した。原告側は長時間労働に加え、教育長による叱責(しっせき)、達成困難なノルマ、担当部門外の現場対応などによる心理的負荷が原因としている。
14日の第2回弁論では、争点の一つになっている自死につながる長時間労働の有無について、双方が意見を交わした。原告側によると、原告側は職員証により電子記録されていた出退勤時間が労働時間にあたると主張。自死する直前の1カ月間は過労死ラインの80時間を超える90時間30分の時間外労働があったとした。一方、市側は「日頃から勤務実態に即した申告をするように指導している」とした上で、パソコンで自己申告された出退勤時間が労働時間にあたるとして、過労死ラインを超える時間外労働はなく、自死との因果関係はないと反論したという。
男性の自死については18年に、地方公務員災害補償基金千葉県支部に公務災害を請求。市教委が調査したが不認定となっている。この調査資料についても、原告側は重要な資料になりうるとして、提出を求めた。
裁判終了後、教育新聞の取材に応じた男性の妻は「夫の死は過重労働によるものと認めてもらいたい。一生懸命仕事をしていたことを分かってもらいたい。その証しが残された家族の生きていく支えになる」と訴えた。
次回の裁判は7月11日に開かれる。