学校の働き方改革の一つとして、終業から次の始業まで11時間を空ける「勤務間インターバル」制度の導入について、永岡桂子文科相は3月14日の閣議後会見で、「公立学校の教員は日々の授業の時間が決まっているという課題もある。今後、制度化については、教員業務の課題とか性質も踏まえながら検討が必要と考えている」と述べた。勤務間インターバルを11時間確保する働き方については、福岡市が昨年9月に教員を含めた職員に導入し、岡山県も3月14日、知事部局を対象に導入する考えを表明した。政府内でも、小倉将信こども政策担当相が3月7日、4月に発足するこども家庭庁に導入する方針を明らかにしている。
勤務間インターバル制度は、勤務終了から次の勤務開始まで十分に休息する時間を確保するための仕組みで、欧州連合(EU)では多くの国で11時間のインターバルが採用されている。例えば、午後11時に勤務を終了した翌日には、11時間のインターバルを空け、午前10時以降に勤務を開始することが義務付けられる。日本でも2019年に施行された働き方改革関連法で勤務間インターバルの導入が事業主の努力義務となったが、具体的なインターバルの時間は示されていない。学校の働き方改革との関連では、2月22日、自民党の「令和の教育人材確保に関する特命委員会」の席上、ワーク・ライフバランス(東京都港区)の小室淑恵社長が公立学校の教職員にも勤務間インターバルを11時間確保する制度を導入するよう求めた。
教職員の働き方改革として11時間の勤務間インターバルを確保する考え方について、永岡文科相は記者会見で質問に答え、「地方公務員である教師の勤務条件等は各自治体で条例などで定めるものだと思っている。また、インターバル制につきましては、文科省としては、給特法に基づく指針において、終業から始業まで一定時間以上の継続した休息時間を確保することと示しており、各教育委員会に教職員の健康等の確保に向けた取り組みを促している」と説明。20年に給特法に基づいて「公立学校の教師の勤務時間の上限」を示した、いわゆる上限指針の中で、勤務間インターバルの必要性は実質的に盛り込まれているとの見方を示した。
その上で、福岡市が教育委員会を含めて勤務間インターバルを11時間確保する制度を導入したことについて「承知している」と言及。全国の教職員に同様の制度を導入することには「公立の学校の教員については、日々の授業の時間が決まっている。時間割で朝(の授業)は決められている、という課題もあると思う。今後、制度化については、公立学校の教員の業務の課題とか性質も踏まえながら、国家公務員や一般の地方公務員の検討状況もみつつ、検討が必要と考えている」と述べた。教員の場合、授業の開始時間が毎朝決まっているので、前日に午後10時まで働いた場合でも、11時間のインターバルを空けて、翌日は午前9時に勤務開始というわけにはいかないのだから、制度化に当たっては、そうした教員業務の課題や性質を踏まえた検討が必要だと見解を示したものとみられる。
また、文科省職員に対して、こども家庭庁のように勤務間インターバルを11時間確保することについては「職員の生活時間とか睡眠時間を確保するのは重要。日々激務にさらされている彼ら彼女らなので、しっかりとした休息時間は必要だと思っている」とした上で、「国家公務員の勤務制度に関しては、政府全体で検討すべき事項。現在の人事院の研究会で勤務間インターバルも含めた柔軟な勤務時間制度の在り方に関する検討が進められている。政府全体の動きも見ながらですね、文科省としても職員の健康維持に努めていきたい」とした。
一方、岡山県は3月14日、終業から次の始業まで11時間を空ける勤務間インターバル制度を導入すると発表した。ワーク・ライフバランス社が提唱する「勤務間インターバル宣言」に賛同した。会見した伊原木隆太知事は「勤務間インターバルの確保は、健康の保持とワーク・ライフ・バランスだけでなく、組織の生産性向上や優秀な人材の確保にも有効であり、職員の11時間のインターバル確保に向けて取り組む。県庁だけでなく県内の企業においても取り組みが広がるよう積極的に働き掛けを行い、健康と生産性向上の好循環の創出を通じた生き生き岡山の実現を目指す」と宣言した。11時間の勤務間インターバル制度の導入を宣言するのは、都道府県では初めてという。
今回の宣言の対象は知事部局の3700人が対象。知事が直接の権限を持たないため。教育委員会は含まれていない。伊原木知事は「特に義務教育の小中学校については市町村の所管となり、今回の宣言は及ばないが、勤務間インターバルをとることで、より仕事の質が上がるということを理解してもらい、県庁をお手本にして市町村からもこのような取り組みが自然と上がってくることを期待したい」と述べた。
岡山県では働き方改革に向けて昨年1月から試行的に勤務間インターバルを取り入れて本格的な導入に備えてきた。県人事課では「新たな制度を作るわけではないが、宣言をきっかけに職員の働き方への問題意識を高めていきたい」と話している。