データの利活用に社会的な関心が高まる中、東京都中央区の開智日本橋学園中学校(一円尚校長、生徒493人)の3年生20人がこのほど、都内のマーケティング・リサーチ(市場調査)会社を訪問し、データを使う仕事について学んだ。民間企業がマーケティングを行う際、消費者アンケートやインタビューなどのデータをどう活用しているか、データを見る際に気を付けなければならないことは何かといったことを学び、自身の将来の仕事をイメージしたという生徒も。同席した教員は、「生徒たちがデータを見極める力を伸ばしていきたい」と期待を込めた。
同中ではキャリア教育の一環として、さまざまな職業について学ぶ機会を設けている。今回訪問したのは、日用品・食品メーカーなどのマーケティングを支援するインテージ(千代田区)。生徒らは市場調査に関する「特別授業」を受けた後、同社ビル内で消費者のインタビューなどに用いられる部屋や、実際に社員らが仕事をしているフロアを見学した。
特別授業では、事前に生徒らが答えた「好きなお菓子」に関するアンケートデータを集計。集計結果を見た生徒からは「思ったより甘いお菓子を望んでいる人が多かった。甘くて簡単に食べられ、手が汚れないお菓子が好きなのだなと思った」「次は(みんなが買いたいと思うような)値段を知りたい」といった感想が上がった。
他にも、データの代表値として平均値・最頻値・中央値のどれを取るかで受ける印象が大きく変わること、グラフの描き方によってデータの一部が誇張されているケースがあることなど、データを見る際に気を付けるべきことを紹介。特別授業を担当した同社の塩野谷豊社長室長は「データを見るときは、うそをついていないか考えて見てみよう」と呼び掛けた。
生徒からは「マーケティング・リサーチの予測が外れたことはあるのか」「アンケートを作るときのコツは」など、多くの質問が寄せられた。若年層を狙って発売した商品が意外にも40代や50代に売れた事例や、アンケートを作る時には、誰に対しても誤解がないよう伝える工夫が必要であることなどが紹介され、生徒らは熱心に聞き入っていた。
訪問を終えた同中3年の村上勇斗さんは「授業で人口のデータを扱ったことがあり、データ分析に関心を持っていた。アンケートやインタビューにはすごく手間が掛かるが、消費者の声を直接聞くことで、その思いを知ることができるのだと分かった。将来、データ分析を仕事にするのも『あり』かもしれない」と笑顔を見せた。
同席した同中の赤羽香純教諭は「探究活動の中で、生徒たちが調べものをしたり、グーグルフォームを使ってアンケートデータを取ったりする機会は多い。そこでは調査の目的に合ったデータが取れているか、データを正しく読み取れているかなどを見極める力が重要になる。いろいろなデータが溢れているからこそ、一度立ち止まって考え、正しくデータを読み取る力を伸ばしていきたい」と期待を込めた。