さいたま市教委は3月18日、未来を生きるトップリーダーとして活躍できる人材の育成を目指し、市立高校および中等教育学校の後期課程の生徒を対象に、今年1月に米国カリフォルニア州シリコンバレーで実施したイノベーションプログラムの成果報告会を行った。同市立大宮国際中等教育学校を会場に、同プログラムに参加した生徒10人が同市の細田眞由美教育長や保護者らを前に、米国でも発表したビジネスプランを英語で発表。その様子はオンラインでも配信された。現地でさまざまな経験を積んだ生徒らは「起業が自分の将来の一つの選択肢になった」「英語力をもっと高め、海外の考え方を学び、世界で活躍できる人になりたい」と充実の表情で語った。
同プログラムには同市立浦和高校から2年生2人、1年生3人、同市立大宮北高校から1年生1人、同市立大宮国際中等教育学校から4年生4人の計10人が参加。今年1月22日から1月30日までの9日間、米国サンフランシスコ市およびサンノゼ市を訪問した。
米国滞在中は、「Oracle」や「Stripe」など世界的な企業で働く日本人から、国際的な企業で必要とされるコミュニケーション能力や、そうした企業で働く楽しさやキャリアの描き方について話を聞いたり、デザイン思考のワークショップなどを体験したりした。また、「Plug and Play」という起業家支援センターでは、ピッチコンテストを見学。3分という限られた時間で、熱を持ってアイデアをプレゼンする人たちを見て、生徒たちは「起業」に対するイメージが変わっていったという。さらに、米国の起業家を相手に昨年10月から練り続けてきたビジネスプランを発表し、評価やアドバイスをもらって帰国した。
この日の報告会で、米国へも同行した細田教育長は「今回は3年ぶりに米国に行って実施することができた。9日間、生徒たちと共に過ごし、大変刺激的で素晴らしい経験をした」とあいさつ。「同プログラムでは米国の起業家たちに生徒たちのプレゼンを見てもらい、評価してもらった。そこでは、『失敗しなさい、失敗から新たなイノベーションが生まれる。イノベーションは、今ある商品やサービスより少しいいだけじゃダメ。尖(とが)ったものを出しなさい』という素晴らしいアドバイスをいただいた」と話した。
続いて、生徒たちはグループごとに、現地で発表し、帰国後にも改良を重ねたビジネスプランを英語で発表した。チーム「Horizon」は、ペットボトルの消費を抑えるために、学校や職場の自動販売機に替えて、ペットボトルをリサイクルして作ったリユース可能なボトルを使用することのできるドリンクステーションなどのビジネスプランを発表。また、チーム「Quartet」は、賞味期限が近いなど、売れ残った商品のみを集めることで他よりも安価に提供できるスーパーマーケットをつくり、さらに食品ロスを防ぐために、購入した食品の消費期限をスマホに送信し、期限切れを防ぐアラートを表示させるシステムなどについて発表した。
英語で堂々と自分たちの考えをプレゼンした生徒たちだが、実は「高校に入るまでは英語は全く得意ではなかった」「今回が初海外」という生徒が多くを占める。米国でスタートアップ企業の人と話したり、ピッチコンテストを見学したりしたことで、「起業は自分からは遠いものだと思っていたが、起業に対するハードルが下がった。まだビジョンはないが、アイデアや仲間がそろった時には挑戦してみたい」「ピッチコンテストを見学して、何度も何度も挑戦して成功していく人たちの輝きがすごいと感じた。起業が自分の将来の一つの選択肢になった」などと変化があったことを報告した。
また、スタートアップ企業や、グローバル企業で働く人たちからは、「お金をもうけるというのが一番にあるのではなく、その人たちの中で絶対にぶれない軸というのがある」といったことも感じたそうだ。「現地の方が、社会の傾向よりも、自分がどうしたいのかという情熱のほうが大切だと言っていたことに感銘を受けた」という感想も上がっていた。
それぞれの将来についても、変化があった。「環境問題を根本的に解決できるような都市デザインに、新たに興味が湧いた」「将来、起業を考える上で、もともと興味があった医学分野と経済分野を結び付けられたらと思っている」「今後は英語力を高め、海外の考え方を学んで、世界で活躍できる人になりたい」といった頼もしい声が聞かれた。