こども家庭庁発足後に「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針」を策定するため、有識者懇談会で議論していた論点整理の報告書がまとまり、3月30日、同懇談会から小倉将信こども政策担当相に提出された。子供がその心身の状況、置かれている環境に関わらず、誕生前から幼児期を通じて切れ目なく育つため、子供と日常的に関わる機会がない人も含む全ての人が共有すべき考え方が盛り込まれた。こども家庭庁ではこの報告書を基に、今秋をめどに指針の策定を行うこととしている。
2021年に12月に閣議決定された「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」では、4月に発足するこども家庭庁が、就学前の子供の健やかな成長のための環境確保や子育て支援に関する事務を所管。「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針」を作成し、その後に閣議決定されることになっている。これを受け、同懇談会では22年7月から会合を開き、6回にわたり有識者やNPOといった関係団体からヒアリングなどを重ね、指針作成の基となる論点整理を行い、報告書とした。
報告書では、子供の誕生前から幼児期までを人生のスタートを切るための最も重要な時期として、子供と日常的に関わる機会のない人も含む全ての人とともに、子供たちの育ちを保障することで全ての人の利益につなげていくことが必要と指摘。指針の目的を、4月に施行されるこども基本法にのっとって、子供の心身の状況、置かれている環境に関わらず、誕生前から切れ目なくその健やかな育ちを保障し、全ての子供がその権利が守られ、将来にわたって幸福(ウェルビーイング)な生活を送ることができる社会の実現とした。
その上で、全ての人で共有したい理念として、▽全ての子供が一人一人個人として、その多様性が尊重され、差別されず、権利が保障されている▽全ての子供が安心・安全に生きることができ、育ちの質が保障されている▽子供の声(思いや願い)が聴かれ、受け止められ、主体性が大事にされている▽子育てをする人が子供の成長の喜びを実感でき、それを支える社会も子供の誕生、成長を一緒に喜び合える━━を掲げた。
さらに、何を共有するかについて、子供の育ちを考えやすくする観点から「妊娠期」「乳児期」「概ね1~3歳」「概ね3歳~幼児期の終わり」ごとの育ちの段階に分けて整理の方向性を示した。「妊娠期」では豊かな社会環境を構築するために考え方を共有したい全ての人が、親になっていく保護者を応援する環境を作り、子育てをポジティブに感じることができたり、困った時に誰の支えを得られるか確認できるようにしていくことが重要とし、「乳児期」では「過ごす空間」や「地域の空間」に、産後の母親がケアされたり、保護者・養育者同士がつながったり、子育ての知恵を学べたりする場があると、保護者・養育者の子育ての負担感や孤立感の緩和につながるとしている。
「概ね1~3歳」では、この時期の子供は家庭の状況によって地域の人との関わりや幼稚園・保育所・認定こども園との関わりが多様で未就園の子供も多く、保護者や養育者の「子育て」を支えるだけでなく、就園状況に関わらず「育ちの質」そのものを保障する発想に立つことの重要性を指摘。「概ね3歳~幼児期の終わり」では、未就園の子供であってもできる限り良質な幼児教育・保育を保障するため、その状況を把握した上で、必要に応じて適切に就園や他の支援につなぐことのできる社会を作っていけるよう、基本的な指針を整理することが望ましいとした。加えて幼児期の終わりまでの育ちが、小学校への架け橋期を経て、それ以降の育ちにどのようにつながっているのか、考え方を分かりやすく共有していくことも重要としている。