児童手当の所得制限を撤廃 少子化対策「加速化プラン」たたき台

児童手当の所得制限を撤廃 少子化対策「加速化プラン」たたき台
「加速化プラン」がまとめられたこども政策の強化に関する関係府省会議
【協賛企画】
広 告

 2022年の出生数が80万人を割り込むなど少子化が深刻化する中、岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」のたたき台がまとまり、小倉将信こども政策担当相が3月31日、岸田首相に報告した。児童手当の所得制限撤廃、給食費無償化の検討、奨学金制度の拡充など優先すべき施策を「こども・子育て支援加速化プラン(加速化プラン)」として今後3年間に集中して取り組む方針を示した。岸田首相はこのたたき台をもとに施策の肉付けを行い、6月に閣議決定する経済財政運営と改革の基本方針に盛り込み、24年度以降の予算編成に反映させる考え。

岸田首相にたたき台を報告後、記者会見する小倉担当相
岸田首相にたたき台を報告後、記者会見する小倉担当相

 この日開かれた「こども政策の強化に関する関係府省会議」でたたき台を岸田首相に報告した後、記者会見した小倉担当相は「少子化は静かな有事。危機的な状況だからこそ、抜本的に取り組んでいかなければいけない、ということをメッセージとして伝えている。一方で、若い方や子育て当事者からみれば、欲しいメッセージは、将来に向かって前に進める安心感だと思っている。若い人や今の子育て当事者がさまざまなことに不安を感じずに、子供を持つ、子供と向き合う喜びを直接感じてもらえるような社会が、これからわが国が目指すべき社会ではないかと考えている」と強調した。

 たたき台では、若い世代が希望通り結婚し、希望する誰もが子供を持ち、ストレスを感じることなく子育てができ、子供がどのような環境、家庭状況にあっても大切にされ、育まれる社会を目指すとして、基本理念として「若い世代の所得を増やす」「社会全体の構造・意識を変える」「全ての子育て世帯を切れ目なく支援する」を掲げた。その上で、30年代に入るまでのこれから6~7年間が少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスと位置付け、今後3年間に集中して取り組むこども・子育て政策の「加速化プラン」を提示した。

 それによると、児童手当については所得制限を撤廃して、現行では中学卒業までとなっている支給期間を高校卒業まで延長する。経済的な負担が多子世帯で大きいことを踏まえて手当額の見直しを行う。

 学校給食費については「無償化に向けて、給食実施率や保護者負担軽減策の実態を把握しつつ、課題の整理を行う」と記載した。この意味合いについて、小倉担当相は会見で「現状の学校給食を見ると、実際に給食を実施していない自治体もあり、実施している自治体に関しても実施方法については例えばセンター方式をとっていたり、そうでなかったりさまざまだ。その意味では検討しなければいけない課題というのが多数あるので、文字通り学校給食費の無償化に向けて課題を整理するということに尽きる」と述べた。

 学校給食費の無償化を巡っては、多くの自治体で取り組みを進めている一方、給食を実施していない自治体もあることから、永岡桂子文科相は3月22日の会見で「給食が提供されているお子さんもいれば、全く提供されていないお子さん、お弁当の地域もあるので、(国が)給食費を無償化するということについては相当綿密な議論が必要だと考えている」と慎重な姿勢を示している。一方、立憲民主党と日本維新の会は、給食費を無償化するための法案を3月29日、国会に共同で提出。24年4月からの実施を求めている。

 また、高等教育費の負担軽減策としては、貸与型奨学金については返済が負担となって結婚・出産・子育てをためらわないように、減額返還制度の年収上限を325万円から400万円に引き上げると同時に、出産や多子世帯の経済的負担を配慮した対応を行う。さらに24年度から授業料減免や給付型奨学金について多子世帯や理工農系の学生など中間層(世帯年収約600万円)に拡大するとともに、授業料の後払い制度(日本版HECS)を大学院修士課程の学生を対象に導入する。

 幼児教育・保育の質の向上の観点から保育所の職員配置基準についても、1歳児は6対1から5対1へ、4~5歳児は30対1から25対1へ改善し、さらに処遇改善を検討していく。

 未就園児対策についても、孤立した子育て世帯に対して就労要件を問わず時間単位で園などの施設を利用できる「こども誰でも通園制度(仮)」の創設を検討する。放課後児童クラブの待機児童対策としては、現行の「新・放課後子ども総合プラン」に基づき、いわゆる「小1の壁」を打破し、子供が安全・安心に過ごせる受け皿の拡充に努めるとしている。

 さらに今回の加速化プランでは、子供・子育てに優しい社会作りのために社会全体の意識改革を求めている。住民参加型の子育て支援を行っている自治体や育休を取りやすい企業などの好事例を展開し、子育ての人々の気持ちに寄り添いながら、全ての人ができることから取り組んでいくという機運の醸成を図る。具体的な取り組みについてこども家庭庁で検討し、今夏をめどに取り組みをスタートさせる。

広 告
広 告