今月発足したこども家庭庁を、こどもたちに知ってもらおうと、同庁は4月4日、全国で「こども新聞」の記者をしているこどもたちの質問に、小倉将信こども政策担当相が答える記者会見を開いた。本物の記者会見さながらの環境で「こどもが意見を言えるだけで決定権がなければ、本当のこどもまんなか社会とは言えないのではないか」などの厳しい質問も出る中、小倉担当相はこども家庭庁としての考えを丁寧に伝えた。記者会見を終えた小倉担当相は、こうしたこども記者との会見を今後も定期的に開いていくことに意欲を示した。
記者会見は、オンラインも含めて、こども向けの新聞で記者をしているこどもたち13人が参加した。「こどもをこども扱いしない」という方針に基づき、記者会見は本物とほぼ同じスタイルを踏襲。小倉担当相が冒頭発言でこども家庭庁の目的などを説明した後、各こども記者が次々に手を挙げ、小倉担当相に対して質問を投げ掛けていった。
4月から中学生になった「毎日小学生新聞」の足立礼美さんは「こどもの意見を聞いて『こどもまんなか社会』を目指しているというが、こどもは意見することができても、こどもに決定権がなく、話を聞いて大人たちが決めるのであれば、その人の考え方が入ってしまい、大人フィルターがかかってしまう。こどもが意見を言えるだけで決定権がなければ、本当の『こどもまんなか社会』とは言えないのではないか」と指摘。
これに対し、小倉担当相は「確かに18歳になるまで、この国では選挙権がないので、その意味ではまだ皆さんは有権者ではないのかもしれない。ただ、子どもの権利条約の中には、こどもは権利の主体者だと書かれている。実は18歳に届かないこどもも、この国を支えていく重要な当事者であって、本来、皆さんにはこの国のさまざまなことについて意見を言う権利があり、われわれには聞く義務がある。その意味では、ご指摘・ご提案いただいたように、こども家庭庁では、子どもの権利条約に書かれているこどもや若者の意見を聞く取り組みをしっかり始めていきたい」と答え、同庁が進めている、約1万人のこども・若者から意見を聞く「こども若者★いけんぷらす」でも、意見をただ聞くだけでなく、どう反映されたか、あるいはなぜ反映されなかったかなどをフィードバックしていくようにすることを説明した。
「朝日小学生新聞」の記者で、小学6年生の弓立燈子さんは「こども家庭庁のホームページを見たとき、小中高生の居場所づくりと書いてあった。小中高生にとって一番身近な場所である学校について、どんな場所になったらいいと考えているか」と学校についての小倉担当相の考えをただした。
これに対し小倉担当相は「しっかり学校の中で学べる、勉強ができるような場にぜひしたいと思っている。今はタブレット端末も配っていて、昔であれば大きな教室でその教科についてよく分かっている生徒も、なかなかついていけない生徒も同じように授業をしていましたけれども、今タブレットを使えば、それぞれの学習状況に合わせて学んでもらえることも可能になると思う。学校の場で思う存分学べる環境をつくってもらいたい」と、個別最適な学びの可能性に言及。
その上で「学校の校庭を広く多くのこどもたちに開放しているところもあれば、なかなかルールがあって自由に校庭が使えないような場所もあると聞いている。こどもたちにとって外で思う存分遊べる環境は重要だが、今はなかなかこどもたちが思う存分遊べる公園や自然の場が減っているので、ぜひ学校が終わった後に校庭で友達と思う存分遊べるような場所に、学校があってほしい。そうは言いながらも、なかなか学校に行きづらいこどもたちもたくさんいるのも事実だ。こども家庭庁としては学校に行って遊んでもらう、学んでもらうのも重要だけれども、それでも学校に行きづらいこどもたちに対して、安心していられる場所をいろんな地域でつくっていきたいと思っている」と述べ、学校以外の居場所づくりにも力を入れようとしている点をアピールした。
最後に「大人とこどもがうまく連携しないといけないと思うが、そのときに一番大切なことは何か」という「こども新聞かほピョンプレス」の記者で、小学6年生の鷹松ななみさんの質問について、小倉担当相は「(大人が)こどもをこども扱いしないことだと思う。子どもの権利条約に書かれている、こどもは意見を表明する権利があって、大人もその意見を聞く義務があることをより多くの大人に知ってもらって、こども扱いせずにきちんと一人の声として大人側が聞く準備をするのが、こどもと大人の連携を図る一歩だ」と強調。一方で小倉担当相は「重要なのは、大人とこどもの連携だけではなく、こども同士の連携もしっかりやっていかなければいけない」とも指摘。「皆さんが堂々と言える環境は、周りの人が意見を聞いてくれる環境でもある。こどもの皆さんに伝えたいメッセージとしては、自分たちの意見を一生懸命に言ってもらいたいと思うのと同時に、自分たちが意見を思い切り言えるためには、聞いてもらわなければいけないので、ぜひ周りの友達が意見を言っているときは、ちゃんと聞く、聞いてもらうことをやってもらうと、巡り巡って自分が意見を言いやすい環境になる」と呼び掛けた。
記者会見終了後、小倉担当相はこどもたちの記者会見を取材していた「大人」の記者団に対して「質問の中で、こども家庭庁の施策が長続きするのだろうかという鋭い指摘ももらった。こういう記者会見も1回こっきりのイベントで終わらせずに、学校があるときはなかなか難しいと思うので、私としては春休み、夏休み、冬休みなど、休みが取れるときに定期的に開催して、こども家庭庁の政策をこども記者の皆さんに説明すると同時に、こどもの視点で考えて質問をしたいというこどもに、こども家庭庁の政策について質問してもらえるような場を定期的に設けたい」と手応えを語った。