茨城大学教育学部附属小学校(水戸市)でいじめ重大事態が発生しながら、法律に基づく文科省への報告を怠っていた問題があり、永岡桂子文科相は4月11日の閣議後会見で、「国立大学の附属学校は地域でモデル校となるべき存在であり、こうした事態はあってはならない」と述べ、太田寛行学長ら大学側に再発防止の検討や被害児童への心のケアなどを行うよう口頭で指導したことを明らかにした。学校側は今月5日、第三者委員会を設置して調査することを決めている。
同大広報室によると、同校の小4女子児童(当時)が2021年春ごろからいじめを理由に長期欠席となり、学校側は同年11月に重大事態と認定した。いじめ防止対策推進法では、心身生命の重大な被害や長期の欠席を余儀なくされている疑いのある重大事態が発生した場合に、学校側は文科省に報告しなければならないとされている。しかし、学校側は今年2月16日まで文科省への報告を怠っていた。
同大は今月7日、ホームページ上で事実関係を認めた上、経緯を説明。それによると、一連の対応の背景には学校側の同法など諸制度への認識不足があり、文科省への報告遅れなどについて被害児童と保護者に6日に謝罪したという。また、事態を招いた要因として学校側のガバナンスに関する深刻な問題もあるとしている。
永岡文科相は11日の閣議後会見で、この問題について、「法律に基づいた調査が長期間実施されずに文科省への発生報告もされなかったことは大変遺憾であると思っている。国立大学の附属学校は地域でもモデル校となるべき存在であり、こうした事態はあってはならない。昨日(10日)、太田学長やその関係者を文科省に呼び、当該事案の顛末(てんまつ)や今後の対応について聴取した。私から信頼回復に向けて全力で取り組むように強く要望した」と説明した。
その上で、大学側に対して、▽第三者委員会を速やかに開催して事実関係を明らかにするとともに、再発防止策の検討を行うこと▽第三者委員会の委員の人選にあたっては公平性、中立性を担保するため、茨城大学以外の専門家を調査委員とすること▽調査の開始前に被害児童、保護者に対してその目的、内容を説明すること。進捗(しんちょく)状況についても適宜説明をして報告を行うこと▽被害児童、保護者に寄り添って十分な心のケアと必要な学習支援を行うこと▽法律に基づいた対応がなされなかったことなどは大学のガバナンス上の課題もあり、原因究明を行い適切な再発防止策を講じること――の5点を口頭で指導したことを明らかにした。
文科省ではこの問題について、引き続き状況を注視しながら、学校側に必要に応じて指導・助言を行うなどの対応を取っていくという。いじめ重大事態を巡り、文科省は3月10日、発生した場合は速やかに文科省に報告するよう、全国の教育委員会などに通知を出したばかりだった。