「各省施策に横串を刺す」 渡辺長官の1問1答

「各省施策に横串を刺す」 渡辺長官の1問1答
記者からの質問に答える渡辺長官(右端)
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 今月発足したこども家庭庁の渡辺由美子初代長官は4月12日、就任後初めて臨んだ記者懇談会で長官としての抱負、これからのこども家庭庁の果たす役割、対策が急がれる少子化問題など広範な質問に答えた。主な1問1答は次の通り。

省庁の縦割りを排除し、しっかり進める

――長官就任にあたっての抱負を。

 こども家庭庁はまさに子供のための国の組織としてスタートするということで、こども家庭庁のスローガンである「こどもまんなか社会」の実現に向けてしっかりと取り組んでいきたい。その上で、政策面と組織管理面という2つの大きな枠の中でしっかり進めていかなければいけないと思っています。

 政策面ではこども家庭庁の機能というのは大きく3つあり、1つ目はいわゆる司令塔機能です。勧告権も法律上はあるわけですけれども、多くの省庁にまたがる事案、例えば今まさにこれから進めようとしている少子化対策、子供の虐待、いじめ、自殺の問題などさまざまな困難を抱えている子供への対応ということについてもしっかり各省施策に横串を刺して、縦割りを排除して進めていきます。

 2つ目は新しい組織ができたのでこれまでなかなか取り組みが進んでこなかった、あるいはなかなか思い付きもしなかったような新しいことにもしっかり取り組んでいきたい。子供の意見を聞いてそれを施策に反映し、フィードバックしていくという仕組みをきちっと作れるかどうかが、こども家庭庁自身の一丁目一番地でもあると思っています。子供の居場所作りの問題や、就学前の子供がどこにいたとしても育ちをどう支えていくかという指針作りといった新しい課題へのチャレンジもそうです。

 3つ目は今回、こども家庭庁、厚労省、内閣府、それから一部文科省からも事業が移ってきているので、それらを自らの事業としてしっかり地方自治体や民間の団体などと連携しながら進めていく。以上3つが政策上の大きな課題だと思っています。

 組織管理面では大きく2つを心が掛けたいと思っています。こども家庭庁というのは新しい組織であるので、いわゆる霞が関の人間だけではなくて地方自治体や民間からさまざまな方が来ています。そういう多様な人材の能力を引き出しながら、シナジー効果が生まれるような強い組織をつくっていきたいと思っています。

 2つ目としては、こども家庭庁が霞が関の働き方改革のいわば先鞭(せんべん)をつけるような役割も担っていかなければならないと思っています。非常に課題が多くて仕事の量は変わりませんが、そういう中で少しでも職員が働きやすい、あるいはさまざまなファミリーイベントと両立できるような職場作りをしていきたい。

子供の声を継続的に聞いていく

――子供に子供自身の権利をどう伝えていくのか。

 こども家庭庁設置法と一緒に施行されたこども基本法が、国際的には児童の権利条約の国内での基本法の位置付けになります。子供自身にどうやってそれを伝えていくかというのは非常に重要だと思っています。設立準備室のときに用意したこども基本法を解説するブックレット、動画といったさまざまなツールを用いていくことが必要ですし、学校教育の現場でそれをどう活用していただくか、こども家庭庁と文科省が協力しながら継続的にそれが伝わっていくような形にしないといけないと思います。それから今実施している「こども若者★いけんぷらす」で子供の声を継続的に聞いていく中で、こども家庭庁として自ら子供の権利の問題をテーマとして取り上げて進めていくということもあると思います。

挽回も厳しい局面に入っていく危機感

――人口減、少子化への対応についての認識は。

 今この時点で少なくとも少子化のスピードを抑えないと、なかなか挽回も厳しい局面に入っていくという危機感は非常に強く持っています。今回のたたき台「こども・子育て政策の強化について(試案)」が単なる提案に終わらないように財源確保も含めて、まずは加速化プランをしっかり回して軌道に乗せることが、まずやらなければいけないことです。もちろんそれだけで十分かという議論は当然あると思うので、そこはそれぞれの施策の検証も含めて、さらにその次も含めて考えていきたいと思っています。

――少子化対策の財源をどのように考えるか。

 この問題はまさにこれから「こども未来戦略会議」で議論されていくので、私が言及するのは控えたいと思いますが、基本的にやはり子供の施策というのは恒久施策になるので安定財源が必要。そうすると安定財源というのはこれまでの制度で見ても保険料的な社会保険というシステムで出てくる財源、いろいろな税、あとは歳出改革などの組み合わせでしかありません。と同時にやる事業の性格によって、例えば企業拠出も伴うようなものがマッチするような施策、やはり税財源で賄うべき施策など、その施策の性質と財源とのマッチングということも必要だと思います。

――子供・子育てに対する社会の意識を変えるためには。

 たたき台に今年の夏をめどにと書いてありますが、国民運動という名称になるかどうかはともかくとして、1回きりのイベントという形ではなくて、継続的に職場であったり、地域であったり、あるいはさまざまな個人であったり、そういう行動を促していくとか、醸成していくような、そういう仕組みを考える必要があると思っています。先立ってそもそもどういうニーズがあるのかというところも、実際にわれわれがここで考えているだけではなくて聞いてみる必要もあると思っているので、そういうことも含めて枠組み作りを考えていきたい。

地方と両輪で政策を進める

――こども家庭庁として、地方自治体との連携をどのようにするか。

 大臣も何度も言っているように、地方とは車の両輪ということで進めていくということで、トップレベルでの定期協議の場も年2回ぐらいをめどにやっていきたいと思っています。設立準備室の時代からもそのような会合を持っているので、それはしっかり続けていきたいと思っています。実際の事業をやるのは市町村なので、われわれも具体的な制度設計とか施策をつくっていく上で、実務的に見て地方の目から見てどうかということはしっかり検証していく必要があると思います。地方との連携の場もトップレベルの場だけではなくて、実務者レベルでの連携も進めていきたいと思っています。

――日本版DBS(子供関連業務への性犯罪歴確認の仕組み)の創設に向けての現状は。

 この問題はまさに省庁のはざまに落ちがちで、どこがやるのかというところが一番問題になって、なかなか動かなかったところだと思います。その意味ではこども家庭庁がそこをしっかり担当としてやっていくということは重要です。ただ一方で職業選択の自由などの議論がありますので、今まさにそこを詰めているところで、その法制的な問題とか具体的な仕組みを整理して、どういう形で進めていくのかということを示していきたい。

――趣味、座右の銘、仕事上での心掛けは。

 趣味、特技はほとんどなく、時間があるときは旅行するのが好きですが、なかなかそういう時間も今ありません。少し非日常経験という意味ではミュージカルやオペラ、宝塚が好きです。座右の銘もこれといってありませんが、仕事を始めてから行き詰まったりするときに、米大統領夫人だったエレノア・ルーズベルトさんの言葉の中に励まされるものが多いです。この2、3月は「やってもやらなくても批判をされるので、それを覚悟で自分の心が正しいと思うことをやりなさい」という言葉を考えながら仕事をしていました。

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