学校制服などで性差をなくす動きが広がる中、水泳用品や介護用品などを手掛けるフットマーク(本社:東京都墨田区)は、ジェンダーレス対応の男女共用水着を全国で初めて開発。4月19日、同社で発表会を開いた。上下に分かれたセパレートタイプで、男女ともに体型や露出を気にせず着られるデザインになっている。昨年度のテスト販売を経て、上着のめくれや入水後の不快感といった課題を改善。現在200校以上が導入を検討しているという。
商品開発に至った理由について、同社が同日に開いた記者会見で担当者は、4~5年前に「どの水着を選んでいいのか分からない」という性の悩みを持つ生徒がいると販売店から連絡があったと説明。その上で、「ジェンダー問題という、人にはなかなか話しづらいような内容をメーカーに直接、電話するということは、言えなくて困っている子供がその後ろにたくさんいるのではないかと考えた」とした。
同社は今年3月、小学5年生~中学2年生の児童生徒とその親1200組にアンケート調査を実施。水泳時などに紫外線から肌を守るラッシュガードを着用する理由を尋ねたところ、「紫外線が気になるから」(64.8%)に次ぎ、「肌を露出したくないから」(43.7%)が2番目に多かったという。また、どんな水着を着たいかという問いに対しても、「露出が控え目」が「着替えやすい」に次ぎ2位。中学2年生女子に至っては、同率1位だった。
同社が開発した男女共用水着は長袖の上着とボトムスに分かれたセパレートタイプ。ともに体型の違いが目立たないように、ゆとりのあるデザインになっている。不意に開かないように、上着のファスナーにはロック機能に加え、引き手部分にガードを付けた。ボトムスは左右に空気穴を設け、水中で膨らみにくくなっている。
昨年度、東京都と兵庫県の公立中学校3校に対して、テスト販売。アンケートで得た意見を基に、改良を加えた。水中で裾がめくれるのを防ぐため、上着とボトムスをひもで結べるようにしたほか、ボトムスのみだった撥水加工を上着にも施し、入水後の不快感を軽減した。
着用した生徒からは「水着姿が気にならず、授業に集中できた」「肌や体毛を隠せて日焼け防止もできてよかった」との声があったほか、今年度に採用した長野県岡谷市立岡谷西部中学校の教員は「学校が統一して水着を指定することを嫌がる生徒もいる。選べる安心感を生徒にも、保護者にも味わってもらいたいという思いが一番強い」と話す。
商品パッケージにはあえてジェンダーレスという言葉は使わなかった。その理由について、同社の担当者は「ジェンダーレス水着と言うと意味もすぐ理解してもらえて、販促もしやすい。しかし、実際に使用する児童生徒のことを考えると、ジェンダーレスという言葉によって、手に取りづらくなるのではという懸念があった」と説明する。
学校採用だけでなく、オンラインによる個別販売も同日から開始。担当者は「授業で使用する水着の自由化はますます進み、水着姿になるのを我慢しなくてもいいように校則や指導内容も新しくなっていくと思われる。いつの時代でも必要とされる商品を開発していきたい」と話す。