教員採用選考試験を行う都道府県・政令市教委に対し、文科省が、大学3年生向けの試験問題の作成を支援することが、4月19日までに分かった。文科省は5月上旬までに、作問に当たる事業者を公募するとともに、作成された試験問題を活用して、今年度後半に選考試験を行う意向があるかを各教委に確認する。試験問題は事業者と文科省、教委、大学の間で協議をもとに作成する予定で、今年12月~来年3月の間で選考試験の日程を決め、希望する教委で実施する。
近年の教員採用倍率の低下や教員不足を背景に、文科省は2024年度をめどに、教員採用選考試験を早期化・複線化する方針を打ち出している。昨年12月に取りまとめられた中教審の答申では、「国においても、各教育委員会等における取り組みに資するよう、教員採用選考試験の早期化・複線化を含めた多様な入職ルートの在り方について研究を行うことが求められる」とされた。今回の支援について同省の担当者は「教員採用の複線化に向けた対応の一環。大学3年生の受験に限定したものだが、単独では実施できない自治体が挑戦できるようになれば」と説明する。
教委がこの事業を活用して今年度、大学3年生の教員採用選考試験を実施する場合、教委から受験者に告知される時期は「早くて6月ごろ」(文科省)だという。現行の教員採用選考試験では、筆記試験として一般的に、一般教養、教職教養、専門教科が作成されているが、今回の大学3年生向けの試験問題は中教審の答申に基づき、思考力・判断力・表現力などを中心に問うような試験問題についても検討するとしており、事前に受験者に対して試験問題のイメージを示す予定。
この事業への参加を検討しているという、ある教委関係者は「大学3年生から受験可能というのは、教委によって意見や判断が分かれるところだと思う。各教委はすでにさまざまな特別選考を実施しているため、そもそも大学3年生の受験にメリットがあるのか、対応できるのだろうか、と悩む教委も多いだろう」と語る。
一方で「準備期間が短いことが心配だが、文科省の『やれることはやっていこう』という前向きなスタンスが伝わってきた。こうした姿勢を前向きに捉える自治体は、参加を検討するのではないか。試験問題の作成にはかなりの予算がかかり、一自治体としては厳しいところもある。この事業を活用すれば実験的に3年生での採用選考試験を実施できるので、大きなメリットではないか」と期待もにじませる。
大学3年生での教員採用選考試験は、首都圏や北陸を中心に実施を表明する自治体が出てきている一方で、「受験生の負担が大きい」「大学4年間で学んだ成果を評価したい」「近隣自治体と足並みをそろえる必要がある」などの理由から、今年度の実施を見送る教委の声も聞かれる。文科省と都道府県・政令市教委などでつくる「教員採用選考試験の在り方に関する関係協議会」は5月をめどに、早期化・複線化に向けた方針を取りまとめる。