デジタル機器の利用が低年齢化する中、経済協力開発機構(OECD)は4月17日に公表した報告書で、デジタル技術が幼児にもたらす機会とリスクを取り上げた。多くの国では、幼児のデジタル機器の利用を禁止するより、安全で責任ある使い方をするよう取り組んでいるとしながらも、幼児をより適切に保護することや、保育士向けのガイドラインや研修の充実を図ることが重要だとした。さらに、幼児教育・保育の段階からデジタルリテラシーを身に付けることが、将来のデジタル格差の是正につながると指摘した。
今回の報告書は、デジタル化のトレンドが幼児や幼児教育に与える影響に関する、30カ国の政策調査研究やケーススタディ、統計分析などをまとめたもの。幼児教育の場では、安全で責任あるデジタル機器の利用に取り組む国が多く、利用を禁止する国は少数派であることを示す一方で、考えられる主な懸念点として「身体面・社会面・感情面での悪影響、プライバシー面の危険、デジタル格差の拡大」を挙げた。
報告書によれば、幼児のデジタル利用に関する保育士向けのガイドラインがあると回答した国は54%にとどまった。また複数の矛盾するガイドラインや、不完全なガイドラインが存在しており、幼児教育・保育の専門家によって対応が異なることがあると指摘。保育士向けのガイドラインを作成し、しっかりとした研修を実施することによって、幼児がデジタルのリスクについて学び、身を守るとともに、創造的に活用できるようになると提言した。
また、女子や困難を抱えた子供は、男子や恵まれた環境にある子供と比べて、テクノロジー分野でのキャリアを選ぶ傾向が低く、そうした格差の是正が、多くの国で課題となっていると分析。そのため、幼児期にデジタルリテラシーを身に付ける機会が重要であるとする一方、幼児教育・保育のカリキュラムの中で、幼児期のデジタルリテラシー育成について具体的な目標を掲げている国は、調査対象国の約半数に過ぎないと述べた。
さらに、幼児がデジタル機器に触れる場は家庭が中心ではあるものの、デジタル機器のリスクや仕組み、創造性などを学ぶには、幼児教育・保育施設が果たす役割も大きいと指摘。実際の端末の画面を使わなくとも、ロボットキットやパズル、カードなどを活用する方法もあると提案した。