クラファンで資金調達し教育実践 鎌倉市の取り組みをヒアリング

クラファンで資金調達し教育実践 鎌倉市の取り組みをヒアリング
オンラインで行われた「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議(YouTubeの画像から)
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 学校運営の支援のために教育委員会などが果たすべき役割などを検討する、「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議(第12回)が4月24日、オンラインで開かれた。児童生徒の興味関心や課題の解決に向けた取り組みに必要な資金を企業や団体から募る神奈川県鎌倉市の取り組みや、兵庫教育大学による自治体の教育長を対象としたトップリーダーセミナーなどについてのヒアリングが行われた。

 鎌倉市が実施しているのは「鎌倉スクールコラボファンド」。同市の岩岡寛人教育長は「学校と企業、NPO、大学などの機関が継続的に連携・協働してコラボレーションできる環境を整えて、社会に開かれた教育課程をしっかりと社会的に実装していくための取り組み」と説明し、「子供たちが大人になる20年、30年先を考え、来るべき未来の社会について積極的に理解を深めて、そこから逆算してどういう教育をしていくべきかという教育過程を組み立てていくことが必要」と指摘した。

 ただ、時代に応じた児童生徒の興味関心や課題を解決するために現状ではリソース不足なので、必要な資金を調達する手段として教育委員会の下にふるさと納税の仕組みを活用したクラウドファンディングを設け、これまで過去3年に企業や団体から約1500万円を調達。これを原資にして企業やNPOなどと共に、SDGsをテーマにした課題解決型学習や防災広告の作成を通じた創造力育成プログラムの実施、シチズンシップ教育、福祉に関する総合学習などさまざまなテーマで普段の授業とは異なる実践を行い、成果を発表してきた。

 岩岡教育長は今後について、「同様の取り組みを実施する自治体と一緒に、実践を共有するコミュニティーというものを作っていきたい。ただスクールコラボファンドというシステムはとてもいいのだが、なぜ鎌倉に投資するのかという意義を説明できないという方が多く、そうした方々の支援への願いというものを受け止めるような全国規模の団体が必要ではないかということを感じてきている」と話した。

 続いて兵庫教育大学大学院学校教育研究科の堀内昭彦教授が、各地で行なっている教育行政トップリーダーセミナーについて説明した。同セミナーは地方分権化が進む教育行政において重要性を増す教育長ら幹部職員に対して、リーダーシップやマネジメントの支援と情報交換の場の提供を目的として行っているという。堀内教授は「教育長は3年間という任期の中で結果を出さなければならないが、ただ漠然と取り組むことでは成果につながっていかない。その行動を起こすために必要な応用力を身に付けるのを主眼にセミナーを開いている」と話す。

 セミナーではその応用力を、人に影響を与え、人を通じて目的を実現する対人面のリーダーシップと、課題を設定し、その解決に向かう対課題面のマネジメントの両面から学ぶ。1万人規模の自治体を想定して、教育委員会事務局、学校、首長との関係といった具体的な事例をもとに、セミナー参加者同士で演習を行うスタイルをとっている。知識の習得をメインとしていないため講師の講義というものはほとんどなく、参加者がお互いの考え方、経験から学ぶことを意識しており、最後の振り返りで自分の思考特徴がどういうものであるかつかんでもらう。

 堀内教授によると、受講後の感想として、「自分に欠けている部分に気付けた」「自分の思考の癖を知ることができた」などの声がある一方、「現場経験のみで教育行政経験がないため難しい内容だった」という声もあったという。

 この日は他に、東京都教委が行っている指導主事の養成・育成に関する研修システムについての説明もあった。

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