今後の教育課程や学習指導などの在り方を議論する、文科省の有識者検討会の第4回会合が4月27日、オンラインを交えて開かれた。この日は、現行の学習指導要領における課題や今後、議論すべき点について、委員が意見交換。学習指導要領の内容の追加や削減、教員のマインドセットなど、さまざまな観点から課題が挙げられた。
同検討会では、▽学習指導要領の実施状況について▽これからの子供たちが学ぶ学校像および生き抜く社会像について▽今後の教育課程、学習指導および学習評価等の在り方について――などを検討している。
市川伸一委員(東京大学名誉教授、帝京大学中学校・高等学校校長)は「これまでの改訂においても、きちんとしたデータや根拠が示されないまま決められてしまうことも多々あった」と苦言を呈した上で、学習指導要領の内容における論点を内容の追加と削減に分けて整理。「社会に出ると必要とされるので、早くから取り組むべき」といった追加の観点に関しては、発達・教育諸科学の知見やこれまでの教育効果の検証など根拠に基づいた議論が重要とした。一方、「内容が多過ぎる。削減すべき」という意見に対しては、塾や学校独自に行っている受験対策といった指導要領以外の負担を考慮する必要があるとした。
さらに、課題発見能力や問題解決力を育むという視点から探究学習の必要性が大きく取り沙汰されている現在は、「ゆとり教育」をスローガンにした学習指導要領が成立した1998年に似ていると持論を展開。当時、学力低下論争が起きた歴史を踏まえ、「極端に言うと、これからは探究だけをやるという現場もある。議論には過去の反省も必要」とくぎを刺した。
高橋純委員(東京学芸大学教育学部教授)は「今後、どのような資質、能力の育成を目指すとしても、子供一人一人を主語として、しっかり力を付けていくことに変わりはない」と述べた上で、増加を続ける不登校や特別な支援を要する子供に向けた柔軟な学習形態の必要性を訴えた。また、さまざまな興味・関心、特長を持つ子供がその力を伸ばしたり、困難を乗り越えたりするために1人1台端末の積極的な活用を提言。その効果を最大限発揮するための指導方法や、体制を築くための仕組みづくりの検討を求めた。
加えて、文科省が昨年12月に速報結果を公表した情報活用能力調査において、小学5年生の約3割は1分間に10文字以下しか、キーボードによる文字入力ができなかったことを問題点に挙げ、義務教育段階における情報活用能力の育成のために、さらなる工夫が求められるとした。
戸ヶ﨑勤委員(埼玉県戸田市教育委員会教育長)は「学習指導要領の優れたコンセプトを『絵に描いた餅』に終わらせるのではなく、着実に定着させていくことが肝要」と強調。前文や総則は大きく変えない方がいいという見方を示した一方、教員のマインドセットに課題を見いだした。「教育委員会も含め、地域や企業など外部人材に口出しされることを歓迎しない文化がまだ全国的に根強い。学びは学校の中だけでは完結しないということを、教員が理解していないのではないか」と投げ掛け、教員の数を増やすだけでなく、変化する社会の動きを取り入れる「進取の精神」を持って仕事をする教員集団の形成に向けた方策を議論する必要があるとした。
また、意見交換に先立ち、文科省の担当者が4月20日に公表した公立小中学校の「教育課程の編成・実施状況調査」の結果概要を報告した。