教員改革に4本柱、奨学金返還免除制の復活も 自民特命委骨子案

教員改革に4本柱、奨学金返還免除制の復活も 自民特命委骨子案
政府に対する提言の骨子案について審議した自民党特命委員会
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 教員の働き方改革や処遇改善に向けた政策を議論している、自民党の「令和の教育人材確保に関する特命委員会」は4月28日、党本部で第6回会合を開き、政府に提言する「令和の教育人材確保実現プラン」の骨子案について審議した。特命委の役員によると、骨子案には「(教員を一般公務員よりも優遇する)人材確保法の初心に立ち返った処遇改善」「手当の改善など、真に頑張っている教師が報われる給与体系の構築」「スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、教員業務支援員や部活動指導員などの支援スタッフの抜本的な配置拡充」「教員になった人に奨学金の返還を免除・軽減する制度の復活」など、教員の働き方改革と人材確保に向けた多岐にわたる項目が盛り込まれている。提言では、2024年度から3年間を抜本的改革期間と位置付け、今年6月に政府が閣議決定する「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)への反映を目指している。

 

 特命委では、これまで5回の会合を開き、有識者など計10人からヒアリング。骨子案の詳細は明らかにされなかったが、会合終了後、取材に応じた田野瀬太道事務局長と青山周平事務局次長によると、案は「働き方改革のさらなる加速」「高度専門職である教師の処遇改善」「学校における指導運営体制の充実」「教職の魅力を高め、志ある優れた人材が教師を目指すための支援」の4本柱で構成されているという。

 「働き方改革のさらなる加速」については、学校改革の取り組み状況の見える化、DX(デジタル・トランスフォーメーション)による業務の効率化、学校および教員が担う業務の明確化と適正化を挙げた。

 「高度専門職である教師の処遇改善」については、優れた人材を確保するため教員の給与を一般の公務員より優遇することを定めたものの、行財政改革の過程で優遇措置が削られた人材確保法(人確法)の初心に立ち返るという考えを掲げた。手当について、青山事務局次長は「真に頑張っている教員が報われるように、メリハリある給与体系を構築する」と説明。田野瀬事務局長は「骨子案には具体的な手当の内容は明記していない」とするとともに、給特法で定められた給与の月額4%に当たる教職調整額の見直しについても「骨子案には数字は出ていない」と述べた

 「学校における指導運営体制の充実」では、「令和型チーム学校の構築」を打ち出し、外部の専門機関や指導体制の構築を合わせて協働可能なチームを作っていく考えを示した。中学校における35人学級の実現や小学校高学年の教科担任制の強化に加え、養護教諭や栄養教諭、事務職員の充実、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、教員業務支援員、部活動指導員などの支援スタッフの抜本的な配置拡充を通して、教員の労働環境を改善することを書き込んだ。

 「教職の魅力を高め、志ある優れた人材が教員を目指すための支援」については、「教職課程を持つ大学と教育委員会が連携協働した教員の養成」「採用研修の一体的充実」「教職課程の見直しを含む養成改革」「教員養成大学に特定の地域で勤務することを条件とする『地域枠』の設定」に加え、行財政改革の一環で廃止された、教員になった人に奨学金の返還を免除・軽減する制度の復活を求めた。心理福祉などの特定分野に強みや専門性を有する教員の育成配置も盛り込んだ。青山事務局次長は「高度専門職としての学びやキャリア形成の保障充実など、多岐にわたって教職の魅力を高めていく」と狙いを説明した。

 骨子案の最後では、こうした項目の実現に向け、政府に対し、来年度予算編成方針として6月に閣議決定する「骨太の方針」に提言内容を反映させ、24年度から3年間を予算・制度両面で抜本的に改革する期間に位置付け、改革を計画的かつ段階的に進めるべきだ、と締めくくっているという。

 田野瀬事務局長によると、この日の特命委では、骨子案の方向性に委員から異論は出なかった。また、会合の最後に、特命委の委員長を務める萩生田光一政調会長は「公教育を高めるという趣旨の提言になる。それが公教育のミニマムスタンダードとして、全国で機能しているかどうか、チェックする体制づくりも必要だ」とあいさつした、と説明した。

 骨子案について、田野瀬事務局長は「4本柱と言ったので、これが大きく曲がることはない」と明言。連休明けに再び審議の場を開き、正式な提言案として取りまとめる考えを示した。

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