子供の不登校をきっかけに3割超の世帯で収入が減ったことがNPO法人「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」が行った全国アンケートで5月8日、分かった。食費やフリースクールの会費などで経済的な負担が増加していたほか、親の仕事に「早退・遅刻が増えた」「休みがちになった」などの影響が出ている実態も明らかになった。
同ネットワークでは、2022年10~11月にかけてインターネットを通じて不登校を経験した子供を持つ親(主に母親)に対してアンケートを行い、640人から回答を得た。会見で中村みちよ共同代表は「小中学校で不登校が24万人を超えた現実の中で、子供たちとともに親も大変な思いをしているということを明らかにするため、調査を行った」と狙いを説明した。
調査結果によると、不登校になったあとの子供の変化について「学校を休んで心が安定した」(68.4%)、「ストレスが減った」(56.1%)、「やりたい学びの時間が増えた」(23.9%)など、学校から距離を取ることで気持ちが楽になったとみられる一方で、「寝起きの時間が乱れて昼夜逆転した」(54.8%)、「自信・やる気がなくなった」(43.8%)という結果もみられた。
一方の親自身については「学校や社会への考え方が変わった、価値観が転換した」が82.5%と最多。中村共同代表は「学校が全て、学校が一番であるといったような従来の考え方とは違う多様な生き方、学び方があるということに気付いて、価値観が変換して親が楽になったということが表れている」と指摘。しかし、「不登校の原因が自分にあるかもと自分を責めた」(66.7%)、「孤独感・孤立感」(53.1%)などの思いを抱える親も浮き彫りになった。
不登校をきっかけとした世帯収入の変化については、「変化はない」が63.9%と最多だったものの、「減った」(31.0%)と「ほぼゼロになった」(2.6%)が合わせて33.6%で全体の3分の1を超えた。具体的に増えた支出としては「食費」(68.1%)、「フリースクールなどの会費」(39.8%)、「通院・カウンセリング費用」(35.5%)だった。食費は学校給食費との二重払いの影響もあるとみられている。
親の働き方への影響についても「早退・遅刻が増えた」(25.6%)、「休みがちになった」(18.3%)、「退職した」(13.3%)が挙がった。中村共同代表は「子供が学校に行けなくなったために面倒を見なくてはいけなくなったためで、小学校低学年の場合には仕事を辞めざるを得なくなったケースもある」と話す。
また、相談先としては、教育委員会(回答者150人)が「助けになった」(28.0%)、「助けにならなかった」(72.0%)、役所の窓口(回答者116人)が「助けになった」(29.3%)、「助けにならなかった」(70.7%)、「担任教師」(回答者573人)が「助けになった」(42.1%)、「助けにならなかった」(57.9%)で、こうした実情が親たちのフリースクールなどへの相談の増加につながっているという。
充実してほしい支援については「子供や親が学校以外で安心できる居場所、人とつながれる」(80.5%)、「学校の柔軟な対応」(76.9%)、「情報提供(フリースクールや親の会など)」(70.9%)、「経済的な支援」(68.0%)が上位を占めた。中村共同代表は「学校に行けなくなった子供たちを無理に学校に戻すということはできない。子供たち、親たちが選択できる居場所、学び場の確保を経済的な支援とともにぜひお願いしたい」と話していた。