子どものウェルビーイング向上を考える ユニセフがシンポ

子どものウェルビーイング向上を考える ユニセフがシンポ
ウェルビーイングを取り入れた学校づくりについて報告する中島校長(Zoomで取材)
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 G7富山・金沢教育大臣会合の開催に合わせ、日本ユニセフ協会は5月10日、オンラインシンポジウム「子どもたちのウェルビーイングをどう高めるか? 教育現場での子どもの権利の実践を通じて」を開催した。次期教育振興基本計画におけるウェルビーイングの検討状況についての報告や、埼玉県上尾市立平方北小学校の中島晴美校長がウェルビーイングを取り入れた学校づくりについて発表した。

 文科省の里見朋香大臣官房審議官は、次期教育振興基本計画の柱の一つである「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」について、まずウェルビーイングの定義を「身体的・精神的・社会的に良い状態にあることをいい、短期的な幸福のみならず、生きがいや人生の意義などの将来にわたる持続的な幸福を含む概念」と説明。ウェルビーイングが求められる背景については、経済先進諸国においてGDPに代表される経済的な豊かさのみならず、精神的な豊かさや健康までを含めて幸福や生きがいを捉える考え方が重視されてきていることなどを挙げた。

 また、OECDの調査で日本の子どもたちは「困難に直面したとき、たいてい解決策を見つけることができる」や「自分の人生には明確な意義や目的がある」などの質問において、他国と比較して低い結果が出ているが、里見大臣官房審議官は「このような問いに対して自信をもって『はい』と答えられる日本人は少ないのではないか。文化的な背景も関係している」と指摘。その上で、日本の特徴や良さを生かした調和と協調に基づくウェルビーイングを、日本発で国際発信していきたいと述べた。

 さらに「次期教育振興基本計画では、子どもたちのウェルビーイングはもとより、教師のウェルビーイングも大事であることを打ち出しているのも重要なポイントだ」と強調した。

 その後のパネルディスカッションでは、ウェルビーイングを考える上で一番重要なことについて意見が交わされ、京都大学大学院教育学研究科のジェルミー・ラプリー准教授は「日本では、子どもたちの自尊心が低いとか幸福度が低いなどといったネガティブな情報が多い。しかし、学校現場の教員に聞くと、子どもたちに対して褒め言葉をたくさん投げ掛けていると聞く。これは素晴らしいことで、国外にも発信していくべきだと思っている」と話した。また、里見大臣官房審議官は「自分たちが学んでいることが、将来の自分たちのウェルビーイングな社会につながっていくということを感じられたならば、教育としては成功なのではないかと思っている」と述べた。

 後半の実践発表では、中島校長が「ウェルビーイングを取り入れた学校づくり」について発表。同校の校長に着任した年にコロナ禍に突入し、子どもたちが毎日学校に行きたいと思えるような、また教員が働きたいと思えるようなウェルビーイングな学校をつくろうと、具体的な実践に取り組んできたと説明した。

 特に、教員が生き生きと働く姿が子どもたちにも良い影響を与えるとの考えから、働き方改革や、心理的安全性を高める組織づくりに注力。「話しやすさ、助け合い、挑戦、新奇歓迎 の4つを全職員が大切にし、実践している」と話し、自らも職員にとって安心して話せたり、信頼して話せたりする存在であるよう努めているとした。

 こうした取り組みがさまざまな成果として現れており、昨年の児童生活アンケートでは、「学校が楽しい」と答えた児童は98%にも上っているといい、また職員のウェルビーイングに関するアンケートでは、約7割近くが「今年1年、子どもたちのウェルビーイングは上がったと思う」、7割以上が「職員室で心理的安全性を実感している」と答えていることなどを報告した。

 中島校長は「教員らが心理的安全性とは何かを理解し、それを各学級で子どもたちに伝えていくという良い連鎖ができてきている。これからも足元からじっくりと取り組んでいきたい」と述べた。

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