防災教育への関心が高まる中、東日本大震災の被災地域における伝承活動について、学習プログラムを実施する団体の96%が活動を継続する上で不安を持っていることが5月8日、公益社団法人3.11メモリアルネットワークが行った調査で分かった。来訪者数はコロナ禍から回復傾向にある一方、後継者やサポート体制について、懸念の声が寄せられた。
調査結果によると、2022年に震災学習プログラムを受けたり、震災伝承施設を訪問したりした高校生以下の人数は6万9175人。前年に比べ、1万3063人増加した=図表①。コロナ前からの特徴的な変化としては、「東北近県からの来訪校が増加」「南海トラフ地震の被害想定地域の学校からの問い合わせが増加傾向にある」などの回答があった。
一方で、活動を継続する上での不安感を尋ねたところ、不安があると回答したのは学習プログラムの実施団体で96%と、24団体中23団体に上った。震災伝承施設でも71%と前年までに比べて高かった=図表②。
具体的な理由として、「去年の今頃と比べて予約が少なくなっており、コロナ後、修学旅行が減っていくことを懸念している」「除草などの維持管理が大変。施設としての伝承の企画予算がつかない」「雇用が不安定な状況で後継者育成ができない。若い人が担っていくためには、きちんと給料が出て生活できる必要がある」などが挙げられた。
同法人のアドバイザーを務める東北大学災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授は「東日本大震災が起きてから10年以上経過していても、全国から高い関心を持っていただいていると言える。コロナ禍収束のいっときの需要拡大とならないように、情報発信を磨きながら継続的に利用してもらえるよう取り組む必要がある」と強調する。
同法人では東日本大震災の伝承活動の現状と課題の共有、防災・減災活動の活性化を目的に毎年、調査を行っている。今回の調査は岩手県・宮城県・福島県の3県で震災学習プログラムを実施する24団体と、震災伝承施設を運営する21組織を対象に実施。3月2日から26日の期間、メールで依頼・回答を集めた。