中高生の約4割「大賛成・やや賛成」 部活動の地域移行

中高生の約4割「大賛成・やや賛成」 部活動の地域移行
iStock.com/agost edit
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 今春から始まった公立中学校の休日における部活動の地域移行について、スポーツに携わる中高生などの約4割が「大賛成・やや賛成」であることが(一社)「スポーツを止めるな」が実施した「部活動改革に対する学生意識調査」の結果で分かった。調査結果からは地域移行によって加わる外部の指導者への期待が大きい一方で、外部委託などによって会費などの費用負担が増えることについての懸念などがうかがえた。

 「スポーツを止めるな」では2022年12月8~23日にかけてスポーツに携わる中学生・高校生・大学生・指導者1201人(うち高校生1091人・中学生23人)に対してスポーツ庁と文化庁が示した「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」(当時は案)に関するアンケートを実施し、オンラインで回答を得た。

 部活動が学校から地域クラブへ移行することについての賛否を問うと、「大賛成・やや賛成」が合わせて39.7%、「大反対・やや反対」が20.0%となった。賛成の主な理由としては「より専門的な知識を得られる可能性があり、競技力向上につながる」「学校という枠にとらわれずに、地域等との交流も深められることはプラスになる」という意見があり、反対の主な理由としては「スポーツをする生徒は激減する可能性があり、種目によってはチーム数が大幅に減って衰退に向かう可能性が高い。部活動から移行するのではなく並行・リンクする方がいい」「地域では人材がそろわず、むしろ生徒のスポーツを行う機会を減らす可能性がある」があった。

 地域移行によって指導者が教員だけでなくプロや元プロといった多様な関係者となることについては、「大賛成・やや賛成」が78.6%で賛成が大多数を占めた。「学校教育以外での多様な考え方を獲得することにつながる」「教員が授業準備や教材研究に時間を割くことができるようになる」と賛成の意見がある一方、「金銭や立地の面から指導者の質に差が生じ、競技上の格差が拡大する」「地方では指導者の確保が困難になる」「プロの指導者は指導力もあっていいと思うが、学校の教員が一番安心できる」との声もあった。

 地域クラブで指導を受けることで活動費用の負担が増加する可能性については、「大賛成・賛成」が17.9%、「大反対・やや反対」が25.9%で反対派が上回った。「現在も強豪校では多額の部費などがあることが多く、地域移行してもあまり変わらない」「自分のやりたいことをやるために支払うお金であればしようがない」とする一方、「親に負担がかかってしまい、スポーツをやめざるを得なくなってしまう」「家庭の金銭的背景などに関わらず多くの子供がスポーツをできるという部活動のメリットが失われてしまう」と家計の負担を不安視する声もあった。

 これまで学校単位でしか出場が認められていなかった大会に今後、地域クラブも参加できるようになることについては、「大賛成・やや賛成」が50.4%、「やや反対・大反対」が17.8%。「いろいろなチームと対戦できるようになることで、競技経験を多く積めるようになる」「今までよりも強いチームと戦うことができるようになる」と前向きな意見がある一方、「チーム間の格差が固定化し、勝ち上がりづらくなる」「クラブチームが大会を総なめし、学校の部活動が廃れる可能性が高い」とする意見があった。

 これらの結果を受け、「スポーツを止めるな」では「ガイドラインの方向性に対しては、おおむね賛同するが、これまでの学校教育において部活動が担ってきた役割を鑑みると、地域クラブへの移行による教育現場の損失については、改めて再考すべき点も残されているのではないか。部活動を通じて得られた能動性やコミュニケーション能力、リーダーシップなどを学ぶ機会は、学校教育から部活動が切り離され、地域クラブに移行した際に補完することができるのか。部活動のない学校現場で、これまでと同様に生徒にそれらを得る機会を与えうるのか。学校が強制参加の塾になってしまわぬよう、学校教育の在り方を含め、部活動と地域クラブ、競技・大会志向の活動とレクリエーション的な活動などが並立できる仕組みを検討する必要があると考える」と提言している。

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