5月12~15日に富山市と金沢市で開かれた先進7カ国(G7)教育相会合で採択された「富山・金沢宣言」を受け、永岡桂子文科相は5月16日、閣議後の会見で、宣言内容を実行していくための施策推進パッケージを策定したことを明らかにした。同パッケージでは、留学生の双方向交流を始めとしたG7各国との連携強化のほか、国内での児童生徒のウェルビーイングに係る実態把握や個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けての推進、教員の働き方改革、処遇の整備などの一体的な推進などが盛り込まれている。永岡文科相は「パッケージも踏まえて、今後『骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)』や2024年度(予算)の概算要求に向けた議論を活発に進めていきたい」と述べた。
G7教育相会合では、G7が今後目指す方向性として、▽コロナ禍を経た学校の在り方▽全ての子供たちの可能性を引き出す教育の実現▽社会課題の解決とイノベーションを結び付けて成長を生み出す人材の育成▽国際社会の連携に向け、新たな価値を創造するための国際教育交流の必要性と役割――について議論され、「富山・金沢宣言」として取りまとめられた。16日の会見で永岡文科相は会合について、「コロナ禍やウクライナ侵略などが全世界に大きな影響を及ぼす中で、G7各国の教育大臣が集まって教育の価値、意義を改めて捉え直して、今後の教育の在り方の議論ができたことは大変有意義であったと考えている」と振り返った。
文科省ではこの宣言内容の実現に向けて、G7各国と連携・協力しながら推進していく施策と国内施策についてパッケージとして取りまとめた。
それによると、G7各国との連携施策の強化については、高校生を中心とした若者の相互交流の促進を進めることとし、日本語を学ぶ各国の高校生を日本の高校に招き、学び合いを通じて交流を深めるとともに、各国との大学間ネットワーク形成による人的交流の促進を掲げた。さらに留学生の双方向交流を推進し、多くの優秀な外国人留学生を受け入れられるよう環境を整備していくとした。
国内施策の推進に向けては、児童生徒の主観的ウェルビーイングについて実態を把握するとともに、学校教育や生涯学習・社会教育を通じて個人と社会のウェルビーイングを向上させるとし、自然体験・文化芸術体験や地域と学校が協働した取り組みの推進、SC(スクールカウンセラー)・SSW(スクールソーシャルワーカー)の配置促進に取り組むほか、デジタルの活用を含めた個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に取り組み、新しい学びへの進化を図るとした。
さらに、GIGAスクール構想・教育データの分析・利活用の推進、教師のICT活用指導力の向上、生成AIなどの新たな技術への対応に取り組むとともに、学校における働き方改革、処遇を含む働きやすい労働条件、少人数学級の推進などの学校の指導・運営体制の整備を一体的に推進するとともに、教師の資質能力の向上を図ることを掲げた。
加えて、児童生徒が主体的に課題を発見し、多様な人と協働しながら課題を解決する探究学習やSTEAM教育の充実、地域や産業界との連携による社会に開かれた教育を展開し、デジタル・グリーンなど時代の変化に応じて必要となる学び直しの促進についても触れている。