今後5年ほどのこども施策の基本方針を包括的にまとめた「こども大綱」の策定に向けて、こども家庭審議会は5月22日、基本政策部会の初会合を開いた。委員の3割以上が、20代・30代の若者や子育て当事者で構成されており、こうした当事者の声を反映させながら、エビデンスに基づく効果的なこども施策を打ち出せるかが鍵となる。
こども基本法では、政府に対して、従来の「少子化社会対策大綱」「子供・若者育成支援推進大綱」「子供の貧困対策に関する大綱」を一元化し、さらに必要な施策を盛り込んだ新たな大綱(こども大綱)を策定するよう求めている。こども家庭庁の発足を前に、政府の「こども政策の推進に係る有識者会議」は3月に第2次報告書を取りまとめ、こども大綱の検討に向けて論点を整理。これを受けて4月に開かれたこども家庭審議会の初会合では、岸田文雄首相から、こども家庭審議会の中で今後5年程度を見据えたこども施策の基本的な方針や重要事項の検討について諮問され、今年秋の取りまとめに向けて基本政策部会で扱うことが決められた。
初会合にあたり、小倉将信こども政策担当相は▽こども・若者、子育て当事者などから意見を聞き、調査審議にその意見を反映すること▽今後のこども施策の基本方針について、有識者会議の第2次報告書で示された論点をさらに深めてほしいこと▽政府が取り組むべきこども施策の大きな柱と方向性を提示してほしいこと▽データや統計を活用したエビデンスに基づく政策体系を構築し、継続的にPDCAサイクルを回せることにつながる議論をすること――を求め、「この基本政策部会はこども家庭庁のさまざまな審議会や分科会の中でも、とりわけ重要な部会の一つだと認識している」と期待を寄せた。
出席した各委員に発言が求められた自由討論では、中長期的な調査を設計し、エビデンスに基づく政策形成(EBPM)に役立てていくべきだとする意見が複数の委員から相次いだ。
駒村康平慶應義塾大学経済学部教授は「長期にわたって同一の人を連続的、追跡的に分析していくことをもって、きちんとしたエビデンスを積み上げていくことを充実・活用していくことは極めて重要だ。その上で、(有識者会議の)第2次報告書でも繰り返し言及されているが、コロナがこどもや家族にどのように影響を与えているかも極めて重要な問題を引き起こす可能性がある。大きな社会的事件を受けた世代が、その後の人生に大きな問題を残してきたという研究はこれまでもあったが、日本はその研究がかなり弱い。コロナによって、こどもやこどもを育てている家族がどのような変調を来しているのか、していないのかを把握して、エビデンスベースの政策をつくっていく必要がある」と強調。
新保幸男神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部教授も「こどもの意見を聞く、若者の意見を聞く、子育て中の大人の意見を聞く、社会的養護下のこどもの意見を聞く、そこから退所していった若者の意見を聞くのは大事だ。ただ聞くだけではなく、データとして積み上げていく必要がある。文字データをデジタルに変えて、人工知能などを活用してより詳細に分析するといったことが必要だ。長期にわたってデータを蓄積していくのは、今の私たちが決めなければいけないことで、これをやりましょうと決める必要がある。何を調べ、何を長期で追っていくのかを早い時期に議論できれば」と述べた。
同部会の座長には、こども家庭審議会会長でもある秋田喜代美学習院大学文学部教授、東京大学名誉教授が選出された。