アシストスーツの認知拡大につなげようと、岡山市の岡山県立興陽高校(中野功校長、生徒581人)はこのほど、地元企業の協力の下、アシストスーツのデザインに乗り出した。考案期間は約2カ月間。採用されたデザインは実際に制作され、展示会などで披露する。
同校の農業科では、医療品用具メーカーのダイヤ工業(本社:岡山市)と連携し、2021年度からスマート農業の実現に向けた授業を展開。ダイヤ工業がぶどう農家向けに開発したスマートスーツを授業で使用するなどして、検証・評価を行ってきた。
今回の取り組みはダイヤ工業が同校に依頼したことで実現。同社は「高校生の視点を取り入れながら、今までにないデザインのアシストスーツを開発し、より多くの方々に認知を拡大し、使用のきっかけになればと思っている」と話す。
モーターや人工筋肉によるサポートで荷物を持ち上げたり、下げたりする時の腰や腕にかかる負担を軽減するサポートスーツは、作業時間の短縮や高齢者、女性の就労を支援する反面、装着性やデザイン性に課題があった。
テーマは「誰もが『着たい!』と思えるアシストスーツ」。「農作業を行う60代男性」と「工場や農業で働く若い女性」の2パターンを作成する。農業科だけでなく、被服デザイン科の2、3年生も取り組みに参加。展示会で目を引く独自性や装着しやすさ、動きやすさも考慮してデザインを行う。
4月に行われた授業では、実際にアシストスーツを着用。スーツを初めて見たという被服デザイン科の生徒も多く、農業科の生徒に助けてもらいながら試着した。スーツを着た生徒は実際に椅子を持ち上げるなどして、その効果を体感。プロジェクトを担当する幸田智樹教諭によると、すぐにアイデアを話し合う生徒の姿も見られたといい、「最初は戸惑うかなと思ったが、若い人の柔軟な発想や創造力はすごい」と舌を巻いた。
制作期間は6月末までを予定しており、最も優れたデザインは実際に製品として制作。完成後、アシストスーツのプロモーションとして、展示会やダイヤ工業のサポーターショップで展示する。
同校の農業科とダイヤ工業はほかにも、地元の動物サポーターメーカーとも連携し、足裏の皮膚を傷めたウサギの保護サポーターを開発するプロジェクトも行っている。こちらは7月の製品化を目指している。
幸田教諭はこうした産学連携の取り組みについて、「学校で教員が教えることは土台が多くを占める。その上で、外からの刺激を受けることは将来のことを考えたり、世の中の仕組みを知ったりする機会になる。進路やキャリア形成の大事なポイントだ」と話す。