給特法の見直しを含む教職員の処遇改善を巡り、自民党文部科学部会は5月29日、政府が方向性を示す見通しとなっている「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針)を議題として取り上げた。会合後、記者団の取材に応じた中村裕之部会長は、骨太の方針の策定に当たり、教職員の処遇改善について「教職調整額(4%から)10%(以上)や(管理職や学級担任など)手当の改善などを求めていく」と説明。その上で「令和6(24)年度からの3年間を集中的に取り組む期間に位置付け、その財源は教育国債を検討するように主張していく」と述べ、学校の働き方改革や教員の処遇改善に必要な財源として「教育国債の検討」を骨太の方針に明記するよう求めていることを明らかにした。出席した議員からは「不退転の決意で取り組むように」などの意見が挙がったという。
中村部会長によると、会合では、骨太の方針に対する自民党文科部会の要望として「高等教育の教育費負担軽減」と「公教育の再生」の2項目を掲げる考えを説明。そのうち「公教育の再生」について、中村部会長は「教職員の処遇改善や働き方改革を進めるためのスクールサポートスタッフ(教員業務支援員)やスクールカウンセラー(SC)、部活動指導員などの人材確保に必要な予算は非常に優先される。そういったところが抜本的に改革できるように取り組んでいきたい」などと取り組み方針を明らかにした。
出席した議員からは「不退転の決意で取り組むように」「ここは頑張りどころだ」などと取り組み方針を支持する意見が相次いだ。また、給食費無償化を巡っては、議員から前向きな意見と慎重な意見がそれぞれ示され、「地域には教育費無償化を求める声がずいぶん多い」「給食費の無償化に予算を使うよりも、教職員の処遇改善や働き方改革、高等教育の負担軽減が優先される」といった意見が示された、という。
学校の働き方改革や教職員の処遇改善に必要な財源について、中村部会長は「教育国債を検討してくれと主張する」と強調。「(教育は)人への投資だ。投資はいまある金だけでやるものではない。調達コストの低い金を使って、投資するのは世の中の常識。そういった観点で、子どもや教育に関しては投資として考えるべきであり、(予算編成上の)給付と負担の考え方ではない」と、従来の見解を改めて説明した。自民党は教育・人材力強化調査会(会長=柴山昌彦元文科相)が昨年5月にまとめた提言で教育国債を活用した「教育投資の抜本的拡充」を打ち出しており、中村部会長も自民党政調の全体会議で教育国債の検討をすでに求めているという。
骨太の方針を巡っては、岸田文雄首相が今年2月、給特法の見直しを視野に入れた教職員の処遇改善について方向性を示す考えを表明。さらに、自民党の「令和の教育人材確保に関する特命委員会」(委員長・萩生田光一政調会長)が今月10日、政策提言「令和の教育人材確保実現プラン」を取りまとめ、長時間勤務は「将来的には月20時間程度」、給特法の教職調整額は「少なくとも10%以上」といった踏み込んだ内容を盛り込むよう、政府に求めた。
一方、永岡桂子文科相は今月22日、中教審の第136回総会で、教職員の働き方改革や処遇改善、学校の指導・運営体制の充実など「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策」について諮問。6月ごろに示される骨太の方針を踏まえ、中教審の特別部会などでさらに議論される見通しだ。