教育国債に慎重姿勢「議論は注視したい」 永岡文科相

教育国債に慎重姿勢「議論は注視したい」 永岡文科相
閣議後会見で質疑に応じる永岡文科相
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 政権与党の自民党内で学校の働き方改革や教職員の処遇改善に必要な財源として「教育国債」の検討を求める意見が出ていることについて、永岡桂子文科相は5月30日、閣議後会見で、「教育国債については、安定財源の確保や財政の信認確保の観点から、慎重に検討する必要があると考えている」と、これまでと同様の見解を改めて示した。また、少子化による児童生徒の減少に伴う教職員定数の自然減により、教員の処遇改善に必要な財源が生じるまでの間、教育国債を「つなぎ」として発行して財源に充て、処遇改善に早急に取り組むべきだとする萩生田光一・同党政調会長の問題提起については「慎重に検討する必要がある。議論は注視していきたい」と述べた。

 自民党文部科学部会は5月29日、政府が6月中の閣議決定を目指している「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針)に、学校の働き方改革や教職員の処遇改善として「(給特法による)教職調整額10%や(管理職や学級担任など)手当の改善などを求めていく」ことを確認。会合後、記者団の取材に応じた中村裕之部会長は「24年度からの3年間を集中的に取り組む期間に位置付け、その財源は教育国債を検討するように主張していく」と述べ、教育国債の検討を骨太の方針に明記するよう求めていく考えを示した。

 こうした教育国債を巡る動きについて、永岡文科相は記者との質疑に応じ、「自民党内で教育国債について意見があることは承知している。教育国債については、安定財源の確保や、また財政の信認確保の観点から、慎重に検討する必要があると考えている」と指摘。その上で、骨太の方針については「骨子案には文科省に深く関係のある項目が掲げられており、文科省としても必要な内容がしっかりと盛り込まれるように調整に当たっていきたい。さまざまな手法を駆使しながら、必要な教育予算は引き続き着実に確保していきたいと考えている」と述べ、教育予算についても骨太の方針に必要な内容を盛り込んでいくことに意欲を示した。教育国債については、永岡文科相は22年9月2日の閣議後会見でも、ほぼ同じ言い回しで記者の質問に答えており、これまでの見解を改めて確認するかたちになっている。

 教育国債を発行し、学校の働き方改革や教職員の処遇改善に必要な財源に充てる考え方を巡っては、萩生田政調会長が5月11日、教育新聞のインタビュー(本紙電子版5月11日付)に応じ、「今やろうとしている改革は、財源があってもなくてもやらなければいけないのだから、少子化による児童生徒の減少によって生じる財源が安定的に落ち着くまでの間は、例えば臨時国債を発行してでも、前に進むべきだ」と指摘した。

 少子化による児童生徒の減少に伴い、教職員定数は義務標準法の規定によって毎年自然減を続けている。現在執行中の23年度当初予算では、教職員定数の自然減として6132人分が計上され、義務教育費国庫負担金は前年度予算比で132億円減額された。一方、自民党が政策提言「令和の教育人材確保実現プラン」に盛り込んだ「教職調整額10%」を実施した場合の国庫負担について、永岡文科相は5月12日の閣議後会見で「追加的な所要額は690億円と見込まれる」と説明している。つまり、少子化による児童生徒の減少が加速している現状では、教職員定数の自然減がこのまま5年程度続けば、「教職調整額10%」の実施に必要な財源が生じる計算になる。萩生田氏の問題提起はこうした状況を踏まえ、教育国債を当面の財源として発行することで、教員の長時間労働を削減するために必要な施策を進め、数年後に教職員定数の自然減によって財源が生じるまでの「つなぎ」とする考え方を示したものとなっている。

 こうした教育国債を「つなぎ」の財源として発行する考え方について、永岡文科相は5月30日の閣議後会見で記者に問われ、「教育国債については安定財源の確保や財政の信認確保の観点から、本当に、慎重に検討する必要があると考えている」と同じ文言を繰り返した上で、「議論は注視をしていきたいと考えている」と述べ、注目していく姿勢をみせた。

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