GIGAスクール構想で全国の小中学校に整備された1人1台端末の更新時期が迫っていることを受け、全国ICT教育首長協議会は更新費用を国費措置とすることなどを盛り込んだ提言をまとめ、5月31日に永岡桂子文科相に手渡した。「3分の2台分は国費、3分の1台分は地方交付税」などGIGA端末の整備時と同様の割合の負担を求めたほか、政府が6月に示す「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に明記するよう要望した。
提言では、「必要な端末更新が地方交付税頼みとなれば、GIGAスクール構想以前の格差が生じることは明らかである。そうなれば、せっかく生まれつつある教育DXの流れが多くの地域でストップするばかりか、デジタル田園都市国家構想や子どもデータ連携といった政権の重要施策の推進に逆行することになりかねない。また、わが国で不足する今後のデジタル人材の中長期的な供給にも支障を来しかねない」と警鐘を鳴らした。その上で、「国策として始めた世界も注目する教育DXの流れを不可逆のものにするためにも、GIGA端末更新にかかわる経費は、整備時と同様の割合で国費措置すべきである」と求めた。
永岡文科相との会談後、記者団の取材に応じた同会の横尾俊彦会長(佐賀県多久市長)は「国策として非常に重要なGIGAスクール構想の推進をたゆみなく、加速化して進めていただきたい。そのことが未来の日本の繁栄と子どもたちの自己実現やより良い教育につながると、(永岡文科相に)改めて申し上げた」と説明。その上で「永岡文科相からは、急きょGIGAスクールを導入した自治体は急ぎ足で整備をしたため、フル活用できていない面があるかもしれない。(そういった地域でも)フル活用できるように、首長からも、教育委員会や学校を激励してほしいと要望があった」と明かした。
さらに横尾会長は「永岡文科相から、G7教育相会合で、日本のGIGAスクール構想が大変話題になったと聞いた。(参加国から)『これだけ短期間に端末を整備して、非常に高度な教育を展開させようとする日本に注目している』といったコメントがあったようだ」とした上で、「(永岡文科相の)国策として推進することが非常に重要だという認識を強く持っているというコメントを心強く感じた」と振り返った。
1人1台端末の更新は、早い自治体では2024年度から更新時期に入る。岸田文雄首相は2月22日の衆院予算委員会で「自治体と連携しながら取り組み、対応を進めたい」と述べたものの、国費負担について政府の具体的な方針は示されていない。
またGIGAスクール構想では、全国全ての小中学生に1人1台端末を配備するため、19年度と20年度の補正予算で合わせて約3000億円を計上している。