子育て世帯への支援拡充などの課題に取り組む7団体で構成する「こどもまんなか政策を実現する会」は6月1日、「扶養控除廃止のストップ」を求める緊急集会を参議院議員会館で開いた。国民民主党の玉木雄一郎代表ら与野党の議員らも参加。各団体の代表は「扶養控除廃止によって、所得制限により高校無償化から除外される世帯が増えるなど、少子化を加速する政策になりかねない」と危機感をあらわにし、扶養控除廃止案の早急な取り下げを訴えた。
政府は児童手当の対象を高校生相当までに拡大することを検討しているが、それと引き換えに16歳から18歳までの子どもがいる世帯の税負担を軽くするための扶養控除を廃止する案が浮上している。
この日の集会の開催趣旨について、子どもの貧困問題に取り組んでいる「あすのば」の理事を務める末冨芳日本大学文理学部教授は、真の「こども子育てまんなか政策」の実現を望む立場から、扶養控除廃止案の早急な取り下げと、▽全ての子どもと子育て家庭へのユニバーサル支援を拡大すること▽子どもと子育て世帯に負の影響が生じる対策は講じないこと▽子育てへの経済的支援の在り方を全世代共通の税・社会保障の枠組みで再構築すること━━を政府に求めた。
末冨教授は「出産無償化やこども誰でも通園制度、全ての子どもへの児童手当など素晴らしい政策が進んできたと思っていたところに、扶養控除廃止の案が出てきた。これは全ての子どもの生存権の否定だ」と強調。「このままでは現金給付・現物給付の効果を打ち消す最悪の少子化加速政策になってしまう」と訴えた。さらに2021年度の全国学力・学習状況調査の保護者調査から試算したところ、扶養控除廃止により98.7%の子どもが、高校生等奨学給付金から排除されたり、高校無償化から排除されたりするなど、何かしらのダメージを受けると懸念を示した。
また、(一社)日本ケアラー連盟の中嶋圭子氏は、扶養控除廃止の影響について、特に低所得者層への負担の連鎖を懸念し、「扶養控除を廃止すると、名目上の所得額が増えることになる。母子家庭などの低所得世帯の場合、今まで非課税だった世帯が課税対象になったり、所得税や住民税が増えたりすることになる」と説明。住民税を根拠として算出される国民健康保険料や介護保険料が増額になるなど、「児童手当を受給してもそれ以上のマイナスが生じる可能性があり、生活設計が変わってしまうリスクへの配慮が必要だ」と訴えた。
子育て支援拡充を目指す会の工藤健一氏は「特に所得制限により高校無償化から除外される世帯が増えることを懸念している」と述べ、「政策全体を見たときに、子どもを産み育てたいと思える政策なのか。年少扶養控除が廃止され、その間に少子化のスピードが加速しているとしか思えない。そうした検証もされないままだ」と強調した。
集会には与野党の議員らも出席。自民党の橋本岳衆議院議員は「扶養控除廃止案は子育て世代の理解を得られないだろうと思っている。ただ、新しい政策をやろうとすると、どなたかに負担を強いることになる。そうしたことも念頭に議論してほしい」と要望。国民民主党からは玉木代表を含め複数の議員が参加し、「未来の当事者になる人たちの可処分所得を削っては絶対にいけない」と強調した。立憲民主党の大西健介衆議院議員は「扶養控除の見直しは、お年玉を削って毎月のお小遣いを増やすようなもので、このような小手先の対応では子育て世代の気持ちは萎えてしまう。国は子育て世代のことを本気で応援してくれると思わせるような政策を打ち出していかなければならない」と声を上げた。