政府の規制改革推進会議は6月1日に答申を取りまとめ、初等中等教育分野の今後の規制緩和策として「教員の役割の見直しを含む教育システムの変革」などを盛り込んだ。具体的には、教員の授業時間が一貫して増加しているとして、教員数の増加や将来的な授業時数の見直しなども視野に、「教員一人当たりの授業に係る負担の軽減を実効的に図ること」を検討するよう求めた。また、教員が担うべき業務を的確に整理するため、「学校・教師が担う業務に係る3分類」について、より実態に沿った形で役割分担の適正化を図ること、教員免許を持たない者が行える業務を明確化することなどを検討することとした。この答申を受け、6日には関係府省庁の連絡会議で規制改革実施計画の原案が議論されており、与党での審査を経て、今月中をめどに閣議決定される見通し。
今回の答申では、初等中等教育分野の課題の一つとして「授業内容の追加による授業数増加や『特別な支援』を必要とする児童・生徒の増加など、授業や生徒指導による教育負担や授業以外の学校に求められる役割に対する負担も同時に増大している」と説明。「教育リソースが限られ、その配分が既存制度を前提として硬直的に行われているとの指摘がなされていることもあいまって、教員の疲弊と教職の魅力の低下につながっている」との見方を示した。
また「こうした事態に対して文科省などが行ってきた政策の効果については、教育現場の実感として課題の解決にはつながっていないとの指摘もあり、政策の目的と手段について改めて検討し、見直す必要がある」と注文を付け、「教育分野における社会課題の解決に向けた取り組み自体を、教育イノベーションの源泉として位置付け、教育システムの再構築に挑むこと」が求められるとした。
その際は「デジタルファーストの視点を常に意識しつつ、効果的で効率的な教育の実現を目指すことに加え、教員から児童・生徒に教育を施すという一方向の旧来的な教育システムに児童・生徒を適合させるのではなく、児童・生徒基点で、教育システムの方が、それぞれのこどもの個性に合わせて柔軟に適用されるという考え方に転換することが必要」と指摘した。
今後の具体的な実施事項としては、中教審の義務教育の在り方ワーキンググループで「多様性と包摂性を重視した教育の実現」について検討し、一定の結論を得ることを求めたほか、教員の負担軽減や教育の質の向上を図る観点から、教員の担うべき役割を詳細に整理し、適切な役割分担がなされるよう、中教審の特別部会などで検討することを求めた。
そのうち、教員が担うべき業務の整理については▽改善策の提示や優良事例の横展開を効果的に進めること▽学校における教員の勤務や、教育委員会による制度運営について、BPR(業務改革)の手法なども踏まえ、詳細に実態や課題の把握を行うこと▽「学校・教師が担う業務に係る3分類」における14項目について、より実態に沿った形で業務を把握・分析し、役割分担の適正化を図ること――を検討事項として盛り込んだ。
また、教員の負担軽減については「これまでの教員勤務の実態に関する調査において、教員の授業時間が一貫して増加していることに鑑み、効果的・効率的な授業の在り方の検討も含めて、教員一人当たりの授業に係る負担の軽減を実効的に図ること」「授業や学習指導・生徒指導などの教師が本来担うべき業務に集中することのできる環境を構築するため、教員免許を持たない者が行える業務の明確化などにより、これまで教員が担ってきた業務を支援スタッフなど教員以外の者が担えるようにすること」を検討するよう求めた。加えて、外部人材の標準的な配置の考え方を示すことや、校長などにより学校マネジメント力の向上に向けた取り組みを検討することとした。
答申では他にも、「学校現場に対する調査について、調査を実施する主体によって調査方法が異なることにより、学校現場の負担になっていることや、調査結果の共有・横断的な分析が困難となっている」として、文科省のWEB調査システム(EduSurvey)を教育委員会の調査でも活用することや、教育委員会に対する調査内容の精査や様式の工夫、実施時期の統一などによる複数調査の一元化を進め、調査の効率化を図ることなどを求めた。