こども家庭審議会の社会的養育・家庭支援部会は6月13日、第2回会合を開き、改正児童福祉法の来年4月からの施行に向けて通知などの具体化を進めていくため、委員から広く意見を聞いた。委員からは「当事者が見えている自立と、行政が見えている自立の姿にずれがあるのではないか」「社会的養護下にある子どもたちにとって、『自立』と言われると強制的な制度からの巣立ちの期限と思えてしまう。内発的な自立を一緒に模索するようなものにしていきたい」といった意見が出た。
昨年改正され、一部を除いた新制度が来年4月から施行予定の児童福祉法について、児童自立生活援助事業や、社会的養護自立支援拠点事業、里親支援センター、権利擁護などの府令における規定内容案が事務局から説明された。
児童自立生活援助事業については、20歳未満での措置施設の解除者だけでなく、母子生活支援施設で保護を実施された人、児童相談所による一時保護または一時保護委託を実施された人を含むことになっており、また再出発支援についても保障されることについては、多くの委員から評価の声が上がった。
河野洋子委員(大分県こども・女性相談支援センター長)は「例えば、現状、児童相談所は原則18歳未満の子どもに関する相談などを受け付けているが、再出発支援なども含めると業務が増えることが考えられる。事業者への周知も必要だし、業務量に応じた加算も盛り込んでほしい」と要望。
さらに権利擁護については、「子どもの意見表明と合わせて、子どもの意見形成支援が必要だ。児童相談所の現場などで、子どもに意見や意向を聞いても『もういいや』などと、投げやりになってしまう子も多い。その場合、児童相談所側が『子どもがそう言ったんだから』と、支援を切ってしまうことがある」と指摘した。
また、渡辺睦美委員(NPO法人全国子どもアドボカシー協議会)は自立支援について、「それぞれの立場で見えている“自立”の姿が違うと感じた。当事者が見えている自立の世界と、行政が見えているもの、支援者が見えているものが違うのではないか。できれば、当事者が見えている自立の世界に擦り合わせていってほしい」と話した。
自身も社会的養護下にあった経験のある荒川美沙貴委員(社会的養護経験者向け情報サイト『Iris』編集長)は「制度上、『自立』という言葉が飛び交うわけだが、社会的養護下にある子どもたちは『自立』と言われると、制度からの強制的な巣立ちの期限というように聞こえてしまう。本当にたった一人にならなければいけないと感じたり、追い立てられるような感覚になったりするという声が多数ある」と説明。
その上で、「子どもたちの前では自立支援計画書や自立担当職員という言葉を、例えばライフプランや人生相談担当といった名称にしてもらえると、制度の中で生活しているというニュアンスが薄れ、自分の人生を考えてくれていることが実感できるのではないか。内発的な自立を一緒に模索するような雰囲気が、この事業からも伝わっていくことを願っている」と意見を述べた。